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自然災害や環境問題を解決に導く「グリーンインフラ」。2020年に国土交通省がプラットフォームを立ち上げるなど、国の事業の根幹になりつつある。そこで、日経コンストラクションが7月に発行した「実践版! グリーンインフラ」の一部を6回にわたって紹介する。第1回は雨水管理で先進的な世田谷区の実装展開だ。(日経コンストラクション)

 東京23区の南西部にある世田谷区。面積は約58km2。人口が約92万人で、世帯数が約48万と23区で突出しており、人口増加が続く。武蔵野台地の北西に位置し、多摩丘陵から東京湾沿岸部に続く水とみどりの基盤の上の住宅都市として発展を遂げた。

 地形は標高30~50mの台地と低地に大別され、河川によって浸食された丘・谷地形などで起伏に富む。多摩川、野川、仙川など、かつては10本の川が流れていた。現在までに区東部から北部の川は暗渠となり、一部は緑道などに姿を変えた。

 世田谷区を代表する自然資源は多摩川と野川に沿った国分寺崖線(がいせん)で、帯状のみどりは生物多様性の観点からも貴重だ。湧水も多く分布する。

 これらは長い時間をかけて育まれてきた都市の貴重なみどりと水の基盤だ。こうした資源をベースに、世田谷区がどのようにグリーンインフラを展開してきたのかを見ていこう。

2032年までにみどり率を33%に

 保坂展人世田谷区長は、「災害に強く、みどり溢(あふ)れる美しい街 豪雨対策にグリーンインフラを区民と共に」をビジョンとして掲げる。「世田谷区みどりの基本計画」「世田谷区豪雨対策行動計画」「世田谷区環境基本計画(後期)」の3つの計画に、グリーンインフラという言葉が使われている。ここでは、みどりの基本計画と豪雨対策行動計画について紹介する。

 みどりの基本計画は2018年に作成され、27年までの10年間にみどりの量の確保、みどりの質の向上、区民との協働による推進を目標としている。世田谷区では、みどりの量を表すために「みどり率」という指標を用いている。樹林地や草地、農地、宅地内の緑で覆われた範囲に、公園や樹木、水面を合わせた全ての面積が地域面積に占める割合だ。

 世田谷区では、32年までに33%のみどり率の実現を目指しており、みどりのある暮らしを楽しめるまちづくりを長期的な目標としている。計画では、水循環の回復という文脈でグリーンインフラを示している(図1)。

図1■ 湧水や地下水などの保全で水循環を回復
図1■ 湧水や地下水などの保全で水循環を回復
みどりの基本計画に示されたグリーンインフラのイメージ。世田谷区みどりの基本計画を基に作成
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