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VRやARによる学習は、「やって覚える」が基本だった建設業の教育と相性が良い。熟練者の視点をバーチャル体験することで、初心者でも容易に理解できる。ゲーム感覚で、体験者の理解度を点数化するシステムも登場している。

 「熟練者と初心者の見る世界は異なる」。VR(仮想現実)やAR(拡張現実)を活用した教育訓練を手掛ける明星大学の西澤秀喜常勤教授はこう語る。例えば、初心者にとっては単なる2次元の図面でも、熟練者はそこから完成後の3次元の姿を思い浮かべている。

 こうした異なる世界の間を橋渡しするのが、VRやARだ。これらの技術を活用すれば、熟練者が積み重ねてきた知識と経験を基に見る世界を、初心者でも疑似体験できる。

 西澤常勤教授は以前、職業能力開発総合大学校に所属し、施工実習教材の開発に取り組んできた。

 そこで開発した技術の1つが「画像マーカー型AR教材」だ(図1)。スマートフォンやタブレットのカメラで捉えた2次元図面に連動して、3次元モデルが立ち上がる。画面からは、図面上に立面を反映したモデルがそのまま重なっているように見える。カメラを動かして図面の向きを変えれば、様々な角度からモデルを見回せる。

図1■ 初心者に2次元図面の読み取りは難しい
図1■ 初心者に2次元図面の読み取りは難しい
アプリを起動したスマホやタブレットのカメラで図面を捉えると、あらかじめ作成していた3次元モデルを画面に表示する。上の写真は、タブレットの画面をモニターに映している様子。西澤秀喜明星大学常勤教授の資料と取材を基に日経コンストラクションが作成(写真:日経コンストラクション)
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 あらかじめ3次元のモデルを作成してクラウド上に保管。2次元図面の一部を目印画像に設定し、3次元モデルとひも付ける。これまで実習教材として使用してきた施工図などを、目印画像に利用できる。

 従来の教材は2次元図面が主体で、初心者には読み取りが難しかった。例えば、鉄筋の組み立てだ。「実習では、手順を間違えて組んだ鉄筋を解体して、再度組み直す場面が少なくなかった」(西澤常勤教授)

 対して熟練者は、2次元図面から3次元の姿を瞬時に想像できる。そこから逆算した加工・組み立て手順は効率的だ。開発した教材を使えば、初心者でもイメージを共有できる。