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黒字事業で赤字事業を補完

 こうした費用削減をまちづくりに生かす取り組みは黒字事業の収益をまちづくりに生かすドイツの「シュタットベルケ」を連想させる。

 シュタットベルケとは、水道や電力、ガスなどのユーティリティーを中心とした「まちのインフラ事業全般」を担う地域密着型事業会社のことだ。ドイツには1000を優に超えるシュタットベルケがあるという。

 シュタットベルケの形態は、株式会社や有限責任会社など様々だ。自治体が100%出資する場合もあれば、自治体と民間が共同出資する場合もある。

 シュタットベルケの中で、水道や電力、ガス、交通、通信など様々なインフラ事業を手掛ける。こうした事業を一体運営することで、電力などの黒字事業が過疎地の公共交通のような赤字事業を補完して、包括的なまちづくりができる仕組みとなっている。

 富里市や東村山市での費用削減の源泉は電力事業だが、シュタットベルケの収益の源泉は、必ずしも電力である必要はない。ただ、その収益や費用削減分がまちづくり全体に使われることを考えると、ほとんどの人が利用するユーティリティー事業が向いているといえるだろう。

人口減少社会の新しいモデル

 日本でも数年前から、シュタットベルケ型まちづくりモデルを展開しようという動きはある。今回の取り組みはそこに、費用削減分をまちづくりに生かすという新しいモデルが加わった格好だ。

 このモデルは縮小する社会において、より有効に機能するかもしれない。既に人口減少社会に入った日本は、こうした新しいまちづくりモデルを貪欲に取り入れていく必要があるだろう。

福島 隆則(ふくしま・たかのり)
三井住友トラスト基礎研究所 PPP・インフラ投資調査部長
福島 隆則(ふくしま・たかのり) 早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了(MBA)。PPP・インフラ投資に関わるリサーチ・コンサルティング業務に従事。内閣府「民間資金等活用事業推進委員会」専門委員。経済産業省「アジア・インフラファイナンス検討会」委員。国土交通省「不動産証券化手法等による公的不動産(PRE)の活用のあり方に関する検討会」委員。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。著書に『インフラ投資 PPP/PFI/コンセッションの制度と契約・実務』(日経BP・共著)、『よくわかるインフラ投資ビジネス』(日経BP・共著)、『スマートシティ2025 ビジネスモデル/ファイナンス編』(日経BP・共著)