圧倒的な人手不足、限られた工期、品質確保の要求、環境保全──。多くの現場に共通する課題は、必ずしも最先端のICT(情報通信技術)を活用するだけで解決できるわけではない。既存工法の地道な改良や試行錯誤を繰り返して生まれた新たな“ローテク”技術も実績を着実に伸ばしている。現場のニーズにいち早く目を付け、新工法の実用化にこぎ着けた現場を取材。新工法誕生の舞台裏をひもといた。

特集
売れる“ローテク”
目次
-
ペット飲料の“蓋”でトルク管理
トルシアナット(ケー・エフ・シー)
常に振動が加わるトンネル内の配管や照明器具、標識などを確実に固定できる新工法はないか。今から5年ほど前、あと施工アンカーなど建設資材の開発や販売、施工を手掛けるケー・エフ・シーで技術部ファスニング・耐震技術室長を務める竹本幸弘は、会議室で頭を抱えていた。
-
人力で動かせる中小橋の移動足場
ブリッジハンガー(西尾レントオール)
「橋梁点検用の新しい足場を考えてほしい。例えば、川に浮かべたゴムボートの4隅に足を付け、桁裏まで持ち上げるようなイメージだ」。建機などのレンタルを手掛ける西尾レントオール技術開発部の部長である藤田全彦は、同社社長の西尾公志から突拍子もない指示を受けた時のことを今も忘れない。
-
2次製品の側溝蓋をオーダーメードで
ディンプル エフ(ゴトウコンクリート)
寸法などが決まった日本産業規格(JIS)の製品は造らない。こんな経営方針を掲げるコンクリート2次製品メーカーがある。ゴトウコンクリート(愛知県豊川市)だ。「価格競争に陥りがちなJIS製品ではなく、独自開発した製品で勝負したい」。社長の松林秀佳は言い切る。
-
平らな金網の壁面材で簡単施工
フラットパネル(岡三リビック)
国土交通省が2020年6月、新技術情報提供システム(NETIS)の準推奨技術に選んだ岡三リビック(東京都港区)のジオテキスタイル補強土壁工法「トリグリッド」。総合評価落札方式の技術提案や工事成績評定で加点対象となり得る工法だ。
-
管路更生に併せて下水熱を回収
ヒートライナー工法(東亜グラウト工業)
雪が降り積もっても、なぜマンホールの上だけは雪が溶けているのか。東亜グラウト工業(東京都新宿区)の技術開発室長の田熊章の研究は、素朴な疑問から始まった。