「橋梁点検用の新しい足場を考えてほしい。例えば、川に浮かべたゴムボートの4隅に足を付け、桁裏まで持ち上げるようなイメージだ」。建機などのレンタルを手掛ける西尾レントオール技術開発部の部長である藤田全彦は、同社社長の西尾公志から突拍子もない指示を受けた時のことを今も忘れない(写真1)。
橋長2m以上の全ての橋を5年に1回ずつ近接目視で点検するよう、国土交通省が義務付けたのは2014年。程なくして、様々な課題が浮き彫りになってきた。
その1つが、主に市町村が管理する幅員5.5m以下、橋長15m以下の小規模な橋の点検をどうするか。地上から近づけない場合、橋面上に止めた橋梁点検車からブームを延ばし、人が先端のかごに乗って橋の下面に回り込むのが一般的だ(写真2)。
しかし、橋梁点検車は3m以上の幅を占有する。「幅員の狭い橋では作業中、通行止めにしなければならない。または、住民などの車が来るたびに橋梁点検車を橋の外に一時退避させる必要があった」と藤田は言う。
吊り足場を取り付ければ作業を中断する必要がなくなるものの、設置と撤去に費用と時間がかかる。小規模橋梁の点検では現実的でない。
こうした現場でも使える足場を考えよ。これが藤田の宿題だった。