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 寸法などが決まった日本産業規格(JIS)の製品は造らない。こんな経営方針を掲げるコンクリート2次製品メーカーがある。ゴトウコンクリート(愛知県豊川市)だ。「価格競争に陥りがちなJIS製品ではなく、独自開発した製品で勝負したい」。社長の松林秀佳は言い切る(写真1)。

写真1■ ゴトウコンクリート社長の松林は、一品生産できる側溝蓋「ディンプル エフ」を開発した。蓋の表面には微細な滑り止め加工を施す。同社は全製品に緻密で耐久性に優れる高流動コンクリートを使っている(写真:日経コンストラクション)
写真1■ ゴトウコンクリート社長の松林は、一品生産できる側溝蓋「ディンプル エフ」を開発した。蓋の表面には微細な滑り止め加工を施す。同社は全製品に緻密で耐久性に優れる高流動コンクリートを使っている(写真:日経コンストラクション)
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 そんな同社が開発した既設側溝のリニューアル工法「ディンプル エフ」が2018年、インフラメンテナンス大賞の優秀賞に輝いた(写真2)。

写真2■ ディンプル エフの施工風景(写真:ゴトウコンクリート)
写真2■ ディンプル エフの施工風景(写真:ゴトウコンクリート)
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工場製作した蓋を設置後、無収縮モルタルを充てんして既設側溝と一体化する(写真:ゴトウコンクリート)
工場製作した蓋を設置後、無収縮モルタルを充てんして既設側溝と一体化する(写真:ゴトウコンクリート)
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 開発の経緯は1998年に遡る。同社は同年、「シェイプアップスリット」と名付けた卵形断面の側溝を実用化。水量が少なくても大きな流速を確保できるので、側溝内部に泥やごみがたまりにくい。断面の上部には幅15mmほどのスリットがあり、蓋やグレーチングを取り付ける必要がない。蓋自体がないので、車が側溝の上を通ってもガタつき音が生じない。

 「主に幹線道路の歩車境界部の街渠に使われた半面、住宅地の生活道路の側溝としてはあまり人気がなかった」と松林は打ち明ける。見慣れない卵形だったうえ、住宅地側から雨水排水管などをつなぐ際に手間を要したからだ。

 その反省を踏まえて松林は03年、一般的なU字形側溝に近い形状の側溝「ディンプル」を開発した。U字形断面の内底に縦断方向のくぼみを設けて流速を高め、泥などの堆積を防ぐ。さらにスリット付きの鉄筋コンクリート製の蓋を用意し、現地で無収縮モルタルを流し込んで側溝と一体化できるようにした。蓋を固定するので、ガタつきや破損を防げる。

 ところが、側溝本体ではなく蓋だけ売れるケースが目立った。ガタついたり、壊れたりした既存の蓋を直してほしいという要望が、住民から行政に多く寄せられていたのだ。道路の舗装化とともに半世紀ほど前に造られた現場打ちの側溝の蓋などの傷みが深刻だった。

 古い側溝はサイズがバラバラ。幅が10cm刻みの規格の蓋を用意しても、現地で使えない。「2次製品メーカーは型枠商売。1つの型枠から同じ形の製品を多く造ることで利益を出す。だが、市場のニーズは違っていた」と松林は途方に暮れた。