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 雪が降り積もっても、なぜマンホールの上だけは雪が溶けているのか。東亜グラウト工業(東京都新宿区)の技術開発室長の田熊章の研究は、素朴な疑問から始まった(写真1)。

写真1■ 東亜グラウト工業技術開発室長の田熊。「下水道や道路、沿道施設など調整先が多く大変だが、ヒートライナー工法の実績を伸ばしたい」と意気込む(写真:日経コンストラクション)
写真1■ 東亜グラウト工業技術開発室長の田熊。「下水道や道路、沿道施設など調整先が多く大変だが、ヒートライナー工法の実績を伸ばしたい」と意気込む(写真:日経コンストラクション)
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 冬は外気温よりも下水の方が暖かく、夏は下水の方が冷たい。下水の水温は年間を通して15~25℃と安定している。一般的な空調機の冷暖房のように空気から熱を回収したり放熱したりするよりも、下水を使った方が効率的だ。

 田熊の研究は2014年、「ヒートライナー工法」として結実した。下水道の管路更生と同時に下水熱を回収する仕組みだ。同工法は18年から19年にかけて、国立環境研究所などが主催する環境賞に加え、国土交通省などのインフラメンテナンス大賞優秀賞、省エネルギーセンターの省エネ大賞中小企業庁長官賞などを相次いで受賞した。

 ヒートライナー工法はまず、下水管の管底に熱交換マットを敷設して不凍液を循環させる。次に、耐酸性のガラス繊維に光硬化性の不飽和ポリエステル樹脂を含浸した更生材を下水管内に引き込んだ後、圧縮空気を送って更生材を膨らませ、管の内面に密着。最後に、管内から紫外線を照射して、更生材を硬化させる(図1写真2、3)。管径250~900mmで、常に管径の10%以上の深さで水が流れる下水管が主な適用対象だ。

図1■ 管底に熱交換マットを敷く
図1■ 管底に熱交換マットを敷く
ヒートライナー工法の概要(資料:東亜グラウト工業)
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写真2■ 熱交換マットを下水管内に引き込む。不凍液は熱の伝導率が高く、腐食に強い架橋ポリエチレン管の中を流れる(写真:東亜グラウト工業)
写真2■ 熱交換マットを下水管内に引き込む。不凍液は熱の伝導率が高く、腐食に強い架橋ポリエチレン管の中を流れる(写真:東亜グラウト工業)
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写真3■ 下水管内に紫外線を照射する装置を走らせ、更生材を硬化させる(写真:東亜グラウト工業)
写真3■ 下水管内に紫外線を照射する装置を走らせ、更生材を硬化させる(写真:東亜グラウト工業)
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 管路更生工法は、東亜グラウト工業などが開発し、日本下水道新技術機構から建設技術審査証明を受けたシームレスシステム工法が基本になっている。「シームレスシステム工法は更生材の強度が高く、更生管の厚みが薄くて済む。熱伝導が良いので、ヒートライナー工法に適している」と田熊は説く。熱交換マットなどの耐用年数は、一般的な下水管と同じ50年ほどを見込む。