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土砂災害警戒区域の誕生から約20年の歳月を経て、ようやく基礎調査が1巡した。調査2巡目は高精度の地図の普及で、警戒区域の指定数がさらに増えるといわれる。警戒区域外での被害防止も踏まえた対応が求められる。

 2020年、国は土砂災害を防ぐための目標を、実に20年越しで達成した。01年に制定した土砂災害防止法では、土砂災害リスクのある警戒区域(イエローゾーン)の指定に向け、危険な箇所を抽出する「基礎調査」の実施を定めた。その調査を全て完了したのだ。

 もともとは、都道府県が約5年間で基礎調査を終わらせる予定だった。しかし土砂法の施行から10年以上が経過しても、大半の自治体で調査が完了しなかった。住民の理解を得るために、かなりの時間を要したことなどが主な要因だ。

 ところが14年8月、70人以上の犠牲者を出した広島での土砂災害を機に、風向きが変わる。被災箇所の多くが土砂災害警戒区域といった要件を満たしていたにもかかわらず、警戒区域として指定されていなかったことが波紋を呼んだのだ。

 その後15年1月の土砂法改正につながり、基礎調査が完了すれば警戒区域の指定前でも調査結果を公表することが義務付けられた。広島県では基礎調査の結果を公表した箇所が15年3月末の時点で1万5000カ所だったのに対して、その後わずか4年間で3倍以上に増えた(図1)。

図1■ 2015年1月の土砂法改正に伴ってリスクの可視化が急加速
図1■ 2015年1月の土砂法改正に伴ってリスクの可視化が急加速
広島県における土砂災害警戒区域の基礎調査結果。公表件数と指定数の推移を示す。広島県と国土交通省の資料を基に日経コンストラクションが作成。写真は2014年8月に広島で起こった土砂災害の様子(写真:日経アーキテクチュア)
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 気になるのが今後の動向だ。国土交通省は19年末から、社会資本整備審議会の「土砂災害防止対策小委員会」(委員長:藤田正治・京都大学防災研究所教授)を開催。そこでの議論を踏まえて、20年8月に土砂災害防止対策の基本方針を変更した。

 方針では、警戒区域において大きく2つの対策を推進する。1つが指定の加速だ。20年6月の時点で、未指定は全国で6000カ所に及ぶ。市町村へ警戒避難体制の構築を急がせるためにも、まずは最優先で指定を終わらせることが求められる。