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通常の土石流では流れないような平坦地まで被害を及ぼす「土砂・洪水氾濫」。水の氾濫と違って土砂は残るため、復旧・復興の妨げになる。近年、頻発する傾向にあり、氾濫が発生しやすい場所の推定が急がれる。

 2020年7月豪雨で、球磨川沿いの自治体の中でも、甚大な浸水被害に遭った球磨村。実は同村では、球磨川の支川である川内(かわうち)川沿いで、「土砂・洪水氾濫」による被害にも見舞われていた(写真1)。

写真1■ 熊本県球磨村の松野地区における土砂・洪水氾濫の被災状況。建物のすぐ横を流れていた川は、大量の土砂で埋まっている。写真手前が上流側(写真:砂防・地すべり技術センター)
写真1■ 熊本県球磨村の松野地区における土砂・洪水氾濫の被災状況。建物のすぐ横を流れていた川は、大量の土砂で埋まっている。写真手前が上流側(写真:砂防・地すべり技術センター)
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 土砂・洪水氾濫とは豪雨によって、複数の箇所で同時に発生した土石流などが増水した川に入り込み、下流側へ運ばれて堆積。そこで河床上昇や河道閉塞を起こし、川から土砂や泥水が氾濫する現象だ。勾配の緩い市街地付近で、被害が拡大しやすい。

 川内川では、流域11km2の各所で斜面崩壊や土石流が発生した(図1)。砂防学会の調査団の報告によると、斜面崩壊や渓岸の崩壊、渓床の浸食など複合的な土砂災害が重なって、土砂が大量に流れ出たとみられる。

図1■ 球磨川の支流の川内川で土砂・洪水氾濫
図1■ 球磨川の支流の川内川で土砂・洪水氾濫
2020年7月豪雨で土砂・洪水氾濫の起こった川内川。黄で塗った箇所は流域面積(資料:砂防学会)
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 近年では、毎年のように全国各地で土砂・洪水氾濫が発生している(図2)。19年は東日本台風によって、宮城県丸森町で大規模な土砂・洪水氾濫が発生。18年には西日本豪雨で広島県坂町が、17年7月の九州北部豪雨では福岡県朝倉市が、16年7月の台風10号では北海道清水町が、それぞれ被害に遭った。

図2■ 平成後半から頻発化の傾向にある土砂・洪水氾濫
図2■ 平成後半から頻発化の傾向にある土砂・洪水氾濫
近年の主な土砂・洪水氾濫(資料:国土交通省、国土地理院)
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 土砂・洪水氾濫の大きな問題は、水だけの氾濫と違って土砂がその場に残り続けることだ。そのため、復旧・復興の妨げになりやすい。川内川では、下流側の市街地に堆積した土砂を撤去したにもかかわらず、2週間後に降った雨で、川の中に埋まっていた土砂が再度氾濫する事態が生じた。

 土砂災害警戒区域の範囲などと全く異なる場所で、被害を及ぼす恐れがある点も悩ましい。