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流木被害が止まらない。2017年7月の九州北部豪雨をはじめ、20年7月豪雨でも見られた。斜面崩壊だけでなく河岸浸食で樹木が流れて、下流側で凶器となっている。生態系などの観点から伐採箇所を総合的に判断して、早期の対策が望まれる。

 近年の水害で目立つ流木被害。2017年7月の九州北部豪雨では、推定約21万m3の流木が発生した。1996~2013年に全国のダムで回収した流木などの量が、年間平均17万2000m3であることと比較すると、その量は飛び抜けている。

 20年7月豪雨による水害でも、被災地のあちこちで流木が見られた(写真1)。球磨川の水位が増え、橋梁などに絡まる流木の影響も相まって川の流れを阻害。氾濫流に乗った流木が家屋などを直撃した。

写真1■ 球磨川に架かる西瀬橋付近。左岸側から2020年7月8日に撮影(写真:水源地環境センター)
写真1■ 球磨川に架かる西瀬橋付近。左岸側から2020年7月8日に撮影(写真:水源地環境センター)
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 被災後は集落にとどまった流木を片付けるのに手間取るため、復旧の遅れにつながる。海までたどり着いた流木は漂流物となって、海洋活動を妨げる。

 流木の発生源として、河川や渓流の上部斜面を思い浮かべる人は多いだろう。大量の雨が降って、表層の土壌が飽和状態に近くなって崩れ、木と一緒に流れ出る──いわゆる「山腹崩壊」だ。

 しかし過去の事例を見ると、川沿いの水辺林が悪影響を及ぼしているケースも意外と多い。増水で河岸が浸食して、そこに生えていた樹木が流れ出るパターンだ。

 例えば、福井県の足羽川流域で多くの土砂災害をもたらした「04年7月福井豪雨」。災害後に設立した山間集落豪雨災害対策検討委員会では、流木の発生原因の5割強が河岸部の浸食だと報告している(図1)。

図1■ 2004年の福井豪雨の流木被害では55%が河岸崩壊
図1■ 2004年の福井豪雨の流木被害では55%が河岸崩壊
2004年7月の福井豪雨災害に伴う流木被害の発生形態。数値は全体の被災箇所数に対する割合(資料:山間集落豪雨災害対策検討委員会報告書)
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 山間部で樹木越しに川を眺められる道路を走った経験はないだろうか。このような場所にある木が河岸浸食ですぐに流れ出て、下流側の橋や民家を直撃。被害を拡大させているのだ(写真2)。

写真2■ 川沿いの樹木が、河岸浸食で流失している様子(写真:京都大学防災研究所)
写真2■ 川沿いの樹木が、河岸浸食で流失している様子(写真:京都大学防災研究所)
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 気候変動の影響に伴って、猛烈な雨はどこでも降る時代になった。これまで雨の少なかった地域ほど、流木被害は拡大するとみられる。洪水の経験がない地域では、水害で流されずに生長し続けている木が多いからだ。