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街中にある山の上に突如として積まれた大量の建設発生土が、豪雨で崩れて災害を引き起こす新たなリスクとなっている。「土砂条例」を定めて受け入れに制約をかけるなど、自治体は対応を急ぐ。

 2018年の西日本豪雨の影響を受け、京都市伏見区にそびえる標高181mの大岩山で土砂災害が発生した。麓の民家の手前で止まったものの、ひとつ間違えば大惨事になっていた(写真1)。現地は、土砂災害防止法に基づく危険区域に指定されていたわけではない。土砂の流出源は山頂に“捨てられた”建設発生土だった(写真2)。

写真1■ 西日本豪雨で土砂崩れのあった大岩山。崩壊末端部の状況。多くの産業廃棄物の破片が散乱していたという(写真:京都大学防災研究所)
写真1■ 西日本豪雨で土砂崩れのあった大岩山。崩壊末端部の状況。多くの産業廃棄物の破片が散乱していたという(写真:京都大学防災研究所)
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写真2■ 市街地から見る大岩山。山頂部に人工の盛り土が確認できる。2020年8月撮影(写真:日経コンストラクション)
写真2■ 市街地から見る大岩山。山頂部に人工の盛り土が確認できる。2020年8月撮影(写真:日経コンストラクション)
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 土地の所有者は米ジャパン・プロパティーズ・ホールディングス。そして管理者はマハリシ・グローバル・トレーディング・ワールド・ピース(栃木県那須町)だ。マハリシは実際の管理を別の会社に委託していたという。

 京都市によると、土地の所有者や管理者の意に反して委託会社が建設発生土を大岩山に造成し始めたのは17年ごろに遡る。「宅地造成等規制法に基づいて造成したいという相談があり、指導していた」。市都市景観部開発指導課の山本篤史技術担当課長は、こう振り返る。

 ところが18年1月に市民からの連絡によって、市は指導していた箇所とは別の斜面側で造成している事実を知る。マハリシなどに宅造等規制法で定める工事基準に従って是正するよう指導していたが、西日本豪雨を迎えてしまった。

全撤去でなく30度の勾配に切り土

 市は災害後に土砂の搬入を停止させ、マハリシに緊急的な対策を求めた。その後、恒久的な安全対策を講じる災害防止措置を命令。同社は20年3月、是正工事に着手した。

 現場では恒久的な対策として、宅造等規制法に基づく造成工事と同じ安全性を担保する。具体的には斜面が安定する30度の勾配となるまで余分な土砂を撤去したり新たに盛り土したりする。切り土の量は4万m3だ。続いて種子を散布し緑化する。

 谷地形を埋める盛り土部分には、マハリシからの提案で暗きょなどを設けた地下水対策を講じる。

 他にも、もともとの森林が喪失して流域に降った雨が下流側に流れる量が増えたので、雨水流出を抑える調整池を構築する。

 各地の建設発生土の問題に詳しい京都大学防災研究所の釜井俊孝教授は、大岩山の恒久対策の一部に疑問を抱く。勾配の基準だ。

 「宅造等規制法で定める30度の安定勾配は、30cmごとに締め固めなどをする前提に基づく。十分な締め固めがされたかどうかも分からない大岩山のケースで、30度の基準を用いるのはおかしい」(釜井教授)

 一方、市は「構造物を設置しない場所でもボーリングを実施。十分な土質調査の上で、盛り土などの安定勾配を計算しているので問題ない」(山本技術担当課長)と説明する。