工事で発生する残土の受け入れ地が決まらず、新幹線建設の先行きが揺らいでいる。ビッグプロジェクトから大量の残土が出る一方で、不適切な投棄を巡るトラブルも後を絶たない。背景には、現場からの搬出量の方が、搬入量よりもはるかに多い実態がある。残土問題に真正面から向き合わないと、建設工事は立ち行かなくなる。

特集
残土クライシス
目次
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北海道とリニアで受け入れ拒否
トンネル工事の残土処分問題が基幹インフラ事業のネックになってきた。北海道新幹線では受け入れ地の確保が難航し、開業が遅れる可能性も。リニア中央新幹線では処分工法や受け入れを拒む動きが出ている。
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現場に即した低コストの対策探る
自然由来の重金属などを含む残土は、その濃度が比較的低いものの、大量に発生する。北海道新幹線の建設工事では特別な処置を施さず、原地盤の吸着効果で重金属などの低減を図る。一方、土壌汚染対策法の対象となる汚染土壌でも、浄化せずに盛り土への利用が可能になった。
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農地に突如現れた高さ10mの山
土地所有者に無断で積み上げられた残土の山に対し、排出者責任を問う異例の裁判が始まった。舞台は、愛知県弥富市の平野部に突然現れた高さ10mほどの山だ。市の新庁舎建設を請け負った熊谷組などに、残土の撤去と損害賠償を求める。
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無条例の自治体を狙い撃ち
建設発生土の受け入れなどを規制する条例のない自治体が、土砂搬入先として狙い撃ちされている。三重県では、建設工事が盛んな首都圏から、大量に搬入されている実態が明らかになった。土砂を巡るトラブルの未然防止策として、条例を制定する例が増えている。
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法規制の網から漏れる
建設資材として再利用できる建設残土は、廃棄物処理法上の「廃棄物」ではない。とはいえ、現場からの搬出量は搬入量を大幅に超えるため、どこかに廃棄せざるを得ない。「廃棄物」ではない残土全体に網をかける法律がなく、トラブル発生の一因となっている。
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残土を追跡して不適正投棄なくせ
産業廃棄物のように、建設残土を発生源から処分先まで追跡するシステムが開発された。スマートフォンとICカードを利用する簡易なシステムなので、小規模現場への普及が期待できる。一方で、官民の間で建設残土を融通して活用を図るマッチングシステムのてこ入れも進む。