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トンネル工事の残土処分問題が基幹インフラ事業のネックになってきた。北海道新幹線では受け入れ地の確保が難航し、開業が遅れる可能性も。リニア中央新幹線では処分工法や受け入れを拒む動きが出ている。

 北海道新幹線の札幌延伸の2030年度末開業に黄信号がともり始めた。延伸区間の新函館北斗─札幌間(延長約212km)のうち、約8割を占めるトンネルの工事で掘削土の処分が難航しているためだ(図1)。

図1■ 残土問題で掘削中断や着工遅れ
図1■ 残土問題で掘削中断や着工遅れ
工事契約率と掘削率は2020年11月1日時点。工事契約率は新函館北斗―札幌間全体、掘削率はトンネル区間に対する延長ベースの数値。鉄道建設・運輸施設整備支援機構の資料と取材を基に日経コンストラクションが作成
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 建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構では、「残土の処分が進まなければ、開業が遅れる恐れがある」といった見方が浮上。新幹線の札幌延伸を要望してきた北海道や沿線14市町村でも、残土問題による開業遅れへの懸念が広がっている。

 延伸事業で特に問題になっているのが、国の環境基準を超える自然由来の重金属などを含む「要対策土」の処分だ。北斗市と厚沢部(あっさぶ)町、八雲町にまたがる渡島(おしま)トンネルの工事では、掘削土から高濃度のヒ素を検出。北斗市の村山地区にある既存の受け入れ地で処分できず、20年10月に一部の工区で掘削を中断した。

図2■ 渡島トンネルで掘削中断
図2■ 渡島トンネルで掘削中断
北海道新幹線の渡島トンネルと要対策土の受け入れ地など。オレンジ色の丸が要対策土の受け入れ地。鉄道建設・運輸施設整備支援機構の資料と取材を基に日経コンストラクションが作成
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 渡島トンネルは、延伸区間の全17トンネルのうち、新函館北斗駅に最も近い。延長は約32.7kmで、7工区に分けて工事を進めている。掘削を中断したのは、北斗市内の南鶉(うずら)工区だ(図2)。18年10月以降に、掘削土から環境基準の最大270倍のヒ素を検出した。

 南鶉工区で出た環境基準を大幅に上回る要対策土は、ヒ素の濃度が施工前の調査の最大100倍に上り、村山地区の対策工で想定した数値を超える。南鶉工区で初めて同数値を超えるヒ素を検出して以来2年にわたって、天狗工区の作業ヤードに仮置きしてきた。しかし、搬入量が仮置き場の容量上限に達したため、掘削を中断せざるを得なかった。鉄道・運輸機構は21年2月末までに北斗市内で新たな仮置き場を整備し、その後の早期再開を目指す。