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自然由来の重金属などを含む残土は、その濃度が比較的低いものの、大量に発生する。北海道新幹線の建設工事では特別な処置を施さず、原地盤の吸着効果で重金属などの低減を図る。一方、土壌汚染対策法の対象となる汚染土壌でも、浄化せずに盛り土への利用が可能になった。

 建設残土の中でも特に事業者の頭を悩ませているのが、自然由来の重金属などを含む「要対策土」だ。北海道新幹線の新函館北斗─札幌間の建設工事では670万m3に上る要対策土の発生が見込まれる。住民の抵抗感が強く、処分先を確保できない要因となっている(写真12)。

写真1■ 札幌市手稲区金山地区にある要対策土の受け入れ候補地。奥に見える山の採石場跡地が候補に挙がっているが、住民の反対が強い(写真:日経コンストラクション)
写真1■ 札幌市手稲区金山地区にある要対策土の受け入れ候補地。奥に見える山の採石場跡地が候補に挙がっているが、住民の反対が強い(写真:日経コンストラクション)
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写真2■ 鉄道・運輸機構では要対策土の受け入れについて住民の理解を得るため、「オープンハウス」を積極的に開いている。写真は2020年11月7~9日、札幌市手稲区山口地区の候補地に関して開催したオープンハウスの様子(写真:鉄道建設・運輸施設整備支援機構)
写真2■ 鉄道・運輸機構では要対策土の受け入れについて住民の理解を得るため、「オープンハウス」を積極的に開いている。写真は2020年11月7~9日、札幌市手稲区山口地区の候補地に関して開催したオープンハウスの様子(写真:鉄道建設・運輸施設整備支援機構)
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 発生量が膨大なだけに、処分コストの問題も軽視できない。建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構北海道新幹線建設局の倉川哲志次長は「安全性を確保しながらも、経済的な対策を打つ必要がある」と話す。

 鉄道・運輸機構は、代表的な対策として6つの工法を挙げる(図1)。現時点で適用しているのは(1)原地盤活用、(2)吸着層、(5)浸透抑制の3種類だ。要対策土を受け入れる処分地のうち、(1)を7カ所、(2)と(5)をそれぞれ1カ所で採用した。

図1■ 有害物質の濃度などに応じて対策を選定
図1■ 有害物質の濃度などに応じて対策を選定
対策工法の例。「要対策土」とは、基準を超える重金属などを含み、処分の際に何らかの対策が必要な土のこと。鉄道建設・運輸施設整備支援機構では「対策土」と呼んでいる。同機構の資料を基に日経コンストラクションが作成
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 6種類の対策のなかで最も簡易で低コストなのが、(1)の原地盤活用だ。地盤の中の重金属などが、水分に溶け出しながら土粒子に吸着する性質を生かす(図2)。飛散防止の覆土以外に特別な処置はない。

図2■ 地盤に重金属などが吸着する性質を利用
図2■ 地盤に重金属などが吸着する性質を利用
原地盤による浄化効果。鉄道・運輸機構の資料を基に日経コンストラクションが作成
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 ただ、土壌への吸着が期待できない岩盤などでは、この工法を適用できない。その場合は(2)の吸着層を利用する。原地盤の上に吸着層を敷設し、その上に対策土を盛る。

 処理後、鉄道・運輸機構が2年間にわたって地下水をモニタリングする。その間、水質が安定し、環境基準を満足していると確認できたら、後の管理は土地所有者に委ねる。

 このように経済性を考慮し、比較的柔軟に対策を選択できるのは、土壌汚染対策法(土対法)の対象ではないからだ。法の規制とは別に、鉄道・運輸機構が自主的に対応している。同機構は要対策土のことを、決して「汚染土」とは呼ばない。