
建設資材として再利用できる建設残土は、廃棄物処理法上の「廃棄物」ではない。とはいえ、現場からの搬出量は搬入量を大幅に超えるため、どこかに廃棄せざるを得ない。「廃棄物」ではない残土全体に網をかける法律がなく、トラブル発生の一因となっている。

建設残土は資源か廃棄物か──。
「建設発生土」と呼ばれる建設残土が引き起こす問題の難しさは、この2面性にある。例えば、切り土工事で発生した残土を盛り土に使えば、その残土は資源だ。一方で、不適切に投棄された残土が各地でトラブルを起こしている。
工事で発生する「建設副産物」のうち、コンクリート塊や建設汚泥などは「廃棄物」として扱われ、廃棄物処理法の対象となる(図1)。しかし、そのまま再利用できる建設発生土は資源と見なされ、同法の対象外だ。廃棄物処理法の上では、建設残土は廃棄物ではない。
残土は資源とはいえ、全てが活用されているわけではない。国土交通省の調査によると、2018年度の実績で、廃棄物であるコンクリート塊は99.5%が再資源化されたのに対し、建設発生土の有効利用率は79.8%にとどまる(図2)。
つまり約2割の建設発生土が、内陸受け入れ地などに廃棄されている。建設副産物のうち、国交省が14年に立てた目標を達成できなかったのは建設発生土だけだ。
国交省の調査では、工事現場から搬出する残土の他、現場内で利用する土も含めて「発生量」と定義している(図3)。そのうち、内陸受け入れ地への搬出分を除いた割合を「有効利用率」と呼ぶ。他の工事に用いる「工事間利用」や、砂利採取跡地などに持ち込む「準有効利用」も、有効利用の範囲に含める。
ただ、有効利用率の改善には限界がある。工事現場からの搬出量の方が、現場への搬入量よりもはるかに多いからだ。18年度の総量で見ると、搬入量6525万m3に対し、搬出量は1億3263万m3と2倍以上の差がある。
建設が進む東京外かく環状道路の大深度地下トンネルのように、土地の限られた都市部では地下を掘削する工事が多い。一方で、高度経済成長期のように、海岸線を次々と埋め立てて土地を広げる時代ではない。どこかに廃棄せざるを得ない残土は、どうしても発生する。