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 横浜市金沢区の住宅地と工業地帯に挟まれた一画に、約53万m2の空き地が広がる。在日米軍が地下や地上のタンク計34基に航空燃料を備蓄した小柴貯油施設の跡地だ。

 2005年12月に日本へ返還され、横浜市が事業費99億円の公園を計画。17年度に着工し、20年度末の一部開園を目指す。タンクを埋め戻すため、市が発注した戸塚区内の下水道工事で生じた建設発生土を、下水道工事の一部として搬入しているところだった。

 この搬入に伴う土の仮置き工事で、20年8月25日に油圧ショベルのオペレーターが突然の悲劇に見舞われた。土に埋もれていた地下タンクの覆蓋(ふくがい)の上に油圧ショベルが乗り入れてしまい、崩れた覆蓋ごと直径約45m、深さ約30mのタンク内に転落。タンクにたまっていた雨水を排出して8月28日に救出したものの、60代の男性のオペレーターは死亡していた(写真1~3図1)。

写真1■ 2020年8月25日、公園整備工事の現場である小柴貯油施設跡地の地下貯油タンク跡に有人の油圧ショベルが転落した。3日後の8月28日、横浜市消防局の部隊に救出されたが、オペレーターは死亡していた(写真:横浜市)
写真1■ 2020年8月25日、公園整備工事の現場である小柴貯油施設跡地の地下貯油タンク跡に有人の油圧ショベルが転落した。3日後の8月28日、横浜市消防局の部隊に救出されたが、オペレーターは死亡していた(写真:横浜市)
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写真2■ 事故発生を受け、横浜市が覆蓋を撤去した貯油タンク跡。覆蓋は写真右端に見えるトラス状の部材に支えられていたが、油圧ショベルが乗ったことで崩落したとみられる(写真:横浜市)
写真2■ 事故発生を受け、横浜市が覆蓋を撤去した貯油タンク跡。覆蓋は写真右端に見えるトラス状の部材に支えられていたが、油圧ショベルが乗ったことで崩落したとみられる(写真:横浜市)
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写真3■ 転落した油圧ショベルは他の工事現場から持ち込まれた建設発生土を小柴貯油施設跡地内で仮置きする作業を担っていた。写真は事故発生前のその仮置き場。タンク跡の位置を示す標識のようなものは見当たらない(写真:横浜市)
写真3■ 転落した油圧ショベルは他の工事現場から持ち込まれた建設発生土を小柴貯油施設跡地内で仮置きする作業を担っていた。写真は事故発生前のその仮置き場。タンク跡の位置を示す標識のようなものは見当たらない(写真:横浜市)
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図1■ 現場に残るタンク跡の位置が施工者に十分に伝わっていなかった恐れ
図1■ 現場に残るタンク跡の位置が施工者に十分に伝わっていなかった恐れ
公園の全体図。黒い円で囲んだタンク跡に油圧ショベルが転落した。発注者の横浜市は建設発生土の搬入作業の元請けである飛島建設・奈良建設・センチュリー工業JVに渡した現場の図面に、事故があったタンク跡の位置を記載していなかった疑いがある。横浜市の資料に日経コンストラクションが加筆
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 仮置き工事を含む下水道工事の元請けは飛島建設・奈良建設・センチュリー工業JVで、オペレーターは2次下請け会社に属していた。公園の整備やタンク跡の埋め戻し工事を直接担っていない施工者だ。

 警察と労働基準監督署は20年12月時点でも事故の捜査や調査を継続している。市はそれを理由に事故の詳細な説明を拒否。事故の発生原因など全容は明らかになっていない。

 飛島建設も日経コンストラクションの取材依頼に「監督署と警察署の判断が出ていない状況での取材は断る」(同社広報室)と答えた。犠牲者を出した2次下請け会社とみられる建設会社も、日経コンストラクションの問い合わせに対し「元請けではないので言うことはない」と述べた。

 それでも、市担当者の市議会での答弁や、市が工事再開に先立って発表した「安全対策」から、事故の原因が見えてきた。明らかになったのは、発注者として市が、元請けとして飛島建設JVが、いずれも必要な務めを果たしていなかった疑いがあるということだ。