全1942文字
PR

市はタンクの位置を図示せず?

 事故の原因を巡り最大の焦点となっているのは、市が事故現場となった地下タンクの位置や転落の危険性を、小柴貯油施設跡地に建設発生土を搬入する飛島建設JV側にあらかじめ知らせて注意を喚起していたか否かだ。

 与野党の市議が代わる代わるこの点について議会で質問している。例えば、日本共産党の古谷靖彦市議は20年9月25日、市と飛島建設JVとの打ち合わせに使われた現場の平面図に問題のタンクが記されていないと指摘。市がタンクの位置を伝えていたかどうかをただした。

 同党が公表している議事録によると、市環境創造局の小林正幸局長は、飛島建設JVにタンクの位置を少なくとも口頭では伝えた可能性を示唆する答弁をした。図面での伝達の有無については明言を避けた。

 これに対し古谷市議は、「現場で作業する2次下請け会社は受発注者の打ち合わせに参加しない」と述べ、口頭では元請けからの連絡事項が伝言ゲームのように必ずしも正しく伝わらない可能性を指摘した。

 市は9月10日の市議会で、現場にタンクを囲む柵はもちろん、土に埋もれて目視できないタンクの存在を示す標識なども設けていなかったことを明らかにした。

 市の職員や飛島建設JVの技術者が、現場で作業に立ち会っていたのかどうかも疑わしい。

 同日の市議会で、市は建設発生土の搬入について同年5月にJVと打ち合わせをした後は、「市の担当監督員は残念ながら現地に赴いていない」(下水道管路部の富永裕之部長)と答弁。飛島建設JVの対応についても、「現場の責任者は戸塚区の下水道工事現場に常駐していて、小柴貯油施設跡地の方の確認状況は市とほぼ同様と聞いている」(富永部長)と述べた。

安全対策に残る不安

 市は転落事故の発生後、建設発生土の搬入だけでなく、別の建設会社に発注していた公園整備工事も中断した。20年9月に市職員による安全対策の検討チームを発足させ、公園整備再開のための安全対策を11月25日に発表。12月3日に工事を再開した(写真4)。

写真4■ 事故の影響で止まった小柴貯油施設跡地公園の歩道橋の工事現場。2020年11月に撮影(写真:日経コンストラクション)
写真4■ 事故の影響で止まった小柴貯油施設跡地公園の歩道橋の工事現場。2020年11月に撮影(写真:日経コンストラクション)
[画像のクリックで拡大表示]

 事故に関する警察の捜査などが継続中で原因は明らかになっていないことから、市は「事故の再発防止策ではない」(市環境創造局技術監理課の長内紀子課長)と強調する。しかし、タンク周辺への柵の設置、位置情報の共有、建設発生土の搬入で他の現場から入ってきた者をタンクに近づけないことなど、実質的に同様の事故の再発を防ぐ内容だ(図2)。

図2■ 横浜市が事故後にまとめた現場の安全対策は事実上の再発防止策を含む
図2■ 横浜市が事故後にまとめた現場の安全対策は事実上の再発防止策を含む
横浜市の資料を基に日経コンストラクションが作成
[画像のクリックで拡大表示]

 対策が確実に実施されるよう、現場の監督や巡回に当たる市職員を増やすか、建設コンサルタント会社などに発注者支援を委託するか否かについて、市は「現在の体制を変更する予定はない」(長内課長)と答えた。事故再発の防止はもっぱら施工者の努力にかかっているといえる。