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 埼玉県越谷市を通る国道4号の歩道で進めていた電線共同溝工事で2020年4月、作業員1人が大腿骨と骨盤を骨折する事故が発生した。現場は深さ1.5m足らずの布掘りした溝の中だ。

 工事は国土交通省関東地方整備局が発注。歩道を最終的に1.59mの深さまで掘削した後、管路を敷設して埋め戻す。作業員は重機で1.46mの深さまで掘削した段階で溝の中に入った。手持ちのショベルで溝の底面を整え、土留め壁として軽量鋼矢板を設置する準備をするためだ。

 その時、掘削した溝の側面に露出していた既設の側溝の側壁が突然倒れ、作業員の下半身にぶつかった。側壁は高さ75cm、厚さ17cmのコンクリートだった(写真1図1)。

写真1■ 事故現場。赤色は最初に倒れた既設側溝の側壁。その後、崩壊範囲は拡大し、青色部分を含む延長11.9mにわたって倒れた。側溝の設置時期は不明(写真:国土交通省関東地方整備局)
写真1■ 事故現場。赤色は最初に倒れた既設側溝の側壁。その後、崩壊範囲は拡大し、青色部分を含む延長11.9mにわたって倒れた。側溝の設置時期は不明(写真:国土交通省関東地方整備局)
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図1■ 土留め壁を設置する前に崩落
図1■ 土留め壁を設置する前に崩落
施工者は事故後、1.2mまで掘削した時点で軽量鋼矢板などを設置するよう作業手順を改めた。国交省は指名停止を科していないことを理由に建設会社名を公表しなかった(資料:国土交通省関東地方整備局)
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舗装に覆われていた既設側溝

 施工者は既設の側溝があることを事前に把握していた。電線共同溝の掘削深さが最終的に1.5mを超えるため、土留め壁の設置も施工計画に盛り込んでいた。

 ところが、「施工者はすぐそばにある側溝が現場打ちかプレキャスト製かといった事前の調査が不足していた」と関東地整技術調査課の伊藤克雄課長補佐は話す。崩れた側溝は、今の新設工事ではほとんど見ない現場打ちの無筋コンクリートだった。底版と側壁が一体のプレキャスト製でないため、打ち継ぎ目地の劣化などで倒れやすい状態だった。

 側溝は厚さ10cmの蓋の上に、歩道のオーバーレイで施したとみられる同15cmのアスファルト舗装が載っていた。もし、施工者が舗装の一部をはがして蓋を外していれば、側溝の状況が分かったはずだ。

 事故発生時点で掘削深さは1.5m以下だったため、土留め壁を設置する義務はない。「明確なルール違反ではないものの、既設埋設物のそばで掘削する場合は深さ1.5m以下でも土留め壁の設置などを検討すべきだった」と伊藤課長補佐は言う。