新型コロナウイルスという新たな困難から始まった2020年代。その影響を色濃く受けた状態で21年が始まる。社会の関心はウイルスに大きく傾いているものの、迫り来る大規模災害や人口減少といった国難を見据えると、土木界が先頭に立って社会インフラを着実に整備していく意義は大きい。21年の土木界をけん引するために把握しておきたい40のキーワードを解説する。

2021年の土木界
目次
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「デジタル」と「グリーン」を推進
2021年以降の動き:インフラの整備・管理に利活用を加えた三位一体の取り組みが進む
政府は、2020年度末に期限を迎える第4次社会資本整備重点計画と交通政策基本計画を改定する。計画期間はいずれも21~25年度の5年間を想定。自然災害の激甚化やデジタル化の進展など社会経済情勢の変化を踏まえ、内容を見直す。
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防災・減災に5年間で15兆円
2021年以降の動き:自然災害やインフラ老朽化など3分野で123の対策を推進
政府は、2020年度末に期限を迎える「国土強靱化のための3か年緊急対策」を5年間延長する。21~25年度に総額15兆円程度の事業規模で、防災・減災対策を推進する。
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統一指標を基に平準化などを図る
2021年以降の動き:品確法に基づく取り組み状況を定量化し、発注者協議会を通じて対策促進
極端な短工期の禁止やダンピング対策の推進など発注者の責務を盛り込んだ「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(品確法)。同法に基づく運用指針が2020年に改正されたことを受け、21年は品確法対応の施策が進む。
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学科と実地の試験を一部組み替え
2021年以降の動き:技士補創設に伴い施工管理技士の試験制度が変わる他、不正対策も始まる
2021年度に新しい資格が誕生する。建設現場の技術的な管理を担う監理技術者を補佐する役割を期待される1級の「技士補」だ。建設業法の改正に伴って、21年4月に施行する建設業法施行令で規定された。
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20年の日程延期が尾を引く試験も
2021年以降の動き:五輪や前年の試験日延期の影響を受け、試験開催時期が例年よりも遅れる例も
新型コロナウイルスの感染拡大によって、2020年度の建設系の資格試験では、試験日の延期といった影響が出た。21年度の試験でも、一部の資格では例年とは異なる試験日設定といった影響が残る。
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全国の1級水系で急ぐ対策を決める
2021年以降の動き:全国の118協議会が3月末までに「流域治水プロジェクト」をまとめる
流域の自治体や企業、住民などあらゆる関係者が協働して水害を防ぐ「流域治水」。そのうち早急に実施すべき対策をまとめた「流域治水プロジェクト」を、全国の1級水系で2021年3月末までに策定する。
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生命に加え“暮らし”を守る施策推進
2021年以降の動き:街づくりと連携した土砂災害対策事業を展開し、基幹インフラの集積地へ集中投資
国土交通省は2021年度、土砂災害に対するハード整備で人の命を守る観点に加え、“暮らし”を守る視点を入れた事業に注力する。
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「災害危険地」には居住させない
2021年以降の動き:災害に弱い地域の土地利用の見直しが進む
毎年のように相次ぐ水害を受けて、街づくりに防災の視点が欠かせなくなってきた。特に注目されているのが、災害が起こりやすい危険な地域における土地利用の規制・誘導だ。
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広域防災に対応する道の駅が誕生
2021年以降の動き:3月末までに認定制度が発足
国土交通省は2021年3月までに、「防災道の駅」の認定制度を創設する予定だ。防災道の駅は緊急ヘリポートなどを備え、大規模災害の発生時に自衛隊や警察、同省の緊急災害対策派遣隊(TEC-FORCE)の広域的な復旧・復興活動の拠点となる。1993年度に始まった道の駅の登録・認定制度を拡充する「第3ステー…
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処分難航で新幹線の開業遅れも
2021年以降の動き:大型工事に伴う残土処分への反発や規制が強まる
建設残土がインフラ整備の制約になってきた。北海道新幹線の札幌延伸では、環境基準を超える自然由来の重金属など含む「要対策土」の処分が難航。延伸区間の8割を占めるトンネル工事で、掘削中断や着工遅れが生じている。
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設計から現場までデジタル化が進む
2021年以降の動き:デジタル技術の開発や公募、実証、導入を加速
データ通信や人工知能(AI)といった技術の躍進を背景に進んできた建設業界のデジタル化。新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、その加速を狙って国土交通省が打ち出したのが「インフラ分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)」だ。
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民間や自治体のデータと連携
2021年以降の動き:国交省が活用事例を作り出してメリットを訴求
国土交通省のデジタル施策を支える基盤となる「国土交通データプラットフォーム」が、普及や拡大に向けて動き出す。構造物をはじめ、交通や気象といった様々なデータを3次元空間に反映した仮想の国土「デジタルツイン」を構築し、業務の効率化などに生かすのだ。2021年は様々な活用事例を公表してメリットを伝え、自…
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21年春に5カ所程度を区域指定
2021年以降の動き:事業計画と規制改革案から成る基本構想の作成が進む
先端技術と規制改革で利便性の高い都市を目指す「スーパーシティ」の実現に向けた動きが本格化する。政府は2021年春をめどに、全国5カ所程度で対象区域を指定。指定区域では、自治体などが事業計画と規制改革案の具体的な検討を始める。
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停留施設などに基準広げ4月に施行
2021年以降の動き:適合対象にバスタを加え、既存施設でも2025年度の完全バリアフリー化を目指す
高齢者や障害者の円滑な移動を促進する改正バリアフリー法が、2021年4月に施行される。改正法では、従来の駅や航空旅客ターミナルなどに加えて、バリアフリー化を求める施設を拡大。公立小中学校と旅客特定車両停留施設(バスなどの旅客の乗り降りのための道路施設)を追加した。
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対象を全国に広げ予防行動促す
2021年以降の動き:暑さ指数を活用した熱中症対策が、地域を限定した試行から本格実施へ移る
熱中症による救急搬送者数が増加傾向にある。気候変動などを考慮すれば、国民生活や経済活動への影響は今後も避けられないだろう。
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コロナ禍でリモート監督が定着か
2021年以降の動き:国土交通省は試行結果を基に制度の実装に向かう
ICT(情報通信技術)を使用して現場に出向かず、映像や音声で工事の進捗などを確認する「遠隔臨場」。主に国土交通省や自治体の監督員の働き方改革を狙って導入してきた仕組みだ。受発注者が接触する機会を減らせるので、2020年春以降の新型コロナウイルスの感染拡大で一気に注目されるようになり、試行件数が急増…
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中小でも不合理な待遇差が禁止に
2021年以降の動き:常用労働者300人以下などの要件を満たす建設会社が対象に
企業における正社員と非正社員との待遇差を是正するパートタイム・有期雇用労働法が、2021年4月に全面施行となる。20年4月から大企業を対象に施行されていたルールが中小企業にも適用される。
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道のり険しい改正労基法への対応
2021年以降の動き:改正労基法への対応に向け、週休2日を定着させる取り組みに拍車が掛かる
2019年に施行された改正労働基準法が、20年4月から中小企業にも適用された。建設業は24年3月末まで適用を猶予されているものの、測量や地質調査、建設コンサルタント、建築設計など、技術サービス業に分類される業種は対象外なので既に同法の適用下にある。
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ウィズコロナで変わる業務と採用
2021年以降の動き:働く場所の選択肢が増え、テレワーク環境が整うとともに採用方法も変化する
2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大防止策としてテレワークや時差出勤の導入が進み、建設業界の働き方が大きく変わった。21年も収束の見通しは立っていない。新型コロナとの共存を図り、働き方の選択肢を増やす動きは止まらない。
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建退共でCCUSの就労実績を活用
2021年以降の動き:3月に建退共が導入予定の電子申請でCCUS登録が必須に
2020年10月に料金を大幅値上げした建設キャリアアップシステム(CCUS)。運営危機への対応策は決まったものの、予断を許さない。登録数が伸び悩めば、再び危機に陥る可能性はある。