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 データ通信や人工知能(AI)といった技術の躍進を背景に進んできた建設業界のデジタル化。新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、その加速を狙って国土交通省が打ち出したのが「インフラ分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)」だ。

 2021年はインフラの整備や点検、災害対応、行政手続きなど各分野で新技術の開発や公募、実証、導入を進める(図1)。その推進費として、20年度の第1次補正予算で177億7700万円を計上。第3次補正予算と21年度の当初予算を合わせて、さらに241億円を投じると決めた。

図1■ 国土交通分野のデジタル化は多面的に
図1■ 国土交通分野のデジタル化は多面的に
「国民」「業界」「職員」の3つの視点で大きく4つの施策をまとめた。国土交通省の資料を基に日経コンストラクションが作成
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 インフラ分野のDX推進本部(本部長:山田邦博技監)の会合で具体的な施策を公表。政府が例年6月にまとめる成長戦略などに盛り込む。

BIM/CIM原則化を前倒し

 DXとは、簡単に言えばデジタル技術による業務や組織、働き方の抜本的な変革だ。とはいえ当面は、なじみ深いi-Constructionの“強化版”と考えて差し支えないだろう。例えば、i-Constructionが推進してきたBIM/CIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング/コンストラクション・インフォメーション・モデリング)活用は、インフラDXの中でも重要な役割を担う。BIM/CIMは設計から工事、検査、維持管理まで事業プロセス全体の改革につながるからだ。

 国交省は、小規模工事を除く全ての直轄事業で23年度までの導入を目指す(図2)。従来の目標を2年前倒しした。橋やトンネル、ダムといった大型事業の詳細設計は、21年度の発注からBIM/CIMの適用を原則とする。やや規模が小さいCランクの構造物の詳細設計でも、21年度から順次導入していく。工事については、詳細設計でBIM/CIMが出そろう23年度以降の原則化を目指す。

図2■ 2021年度はCランク以上の工事の詳細設計でもBIM/CIM
図2■ 2021年度はCランク以上の工事の詳細設計でもBIM/CIM
3次元モデルの納品要領に基づく利用を「適用」、それ以外を「活用」としている(資料:国土交通省)
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 BIM/CIMの利用が拡大すれば、3次元データの活用環境が一層整う。インフラDXでは、ドローンやレーザースキャナーでコンクリート構造物などを3次元の点群データとして取得し、BIM/CIMモデルと比較して出来形管理に生かす方法などを検討する。

 工事現場でもデジタル技術の導入が進む。その1つが、重量物の持ち上げといった苦渋作業を軽減するために作業員の体に装着する「パワーアシストスーツ」だ。国交省が設立したワーキンググループで、21年に現場実証を実施する。