ICT(情報通信技術)を使用して現場に出向かず、映像や音声で工事の進捗などを確認する「遠隔臨場」(写真1)。主に国土交通省や自治体の監督員の働き方改革を狙って導入してきた仕組みだ。受発注者が接触する機会を減らせるので、2020年春以降の新型コロナウイルスの感染拡大で一気に注目されるようになり、試行件数が急増した。
試行段階にあったこの方法が、21年は珍しくない取り組みへと変わっていきそうだ。
国交省は20年12月、遠隔臨場を試行中、または試行予定の直轄工事の件数が、同年9月末時点で560件に上ると発表した(図1)。地方整備局別の件数で最も多いのは関東地整の125件で、これに中部地整の103件、中国地整の83件が続いた。
同年3月に見込んでいた21年3月末までの試行件数は100件程度だったので、件数は当初見通しの5倍以上に増えていた。中国地整技術管理課は、「受注者側が対応可能かを確認したうえで対象工事に指定している。事前に確認した感じでは、20年度末までに件数はもっと増えそうだ」とコメントを寄せた。
国交省技術調査課に21年度の遠隔臨場の位置付けについて尋ねると、試行段階から次のステップに進むという見解を示した。「遠隔臨場を直轄工事の制度として実装する方向で検討していく」(建設システム管理企画室の清憲三・技術管理係長)
遠隔臨場の普及・拡大は、発注者による現場確認の効率化をもたらすだけではない。遠隔臨場で使う高度な技術の採用による現場作業の省力化はその1つだ。