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 5年周期の橋やトンネルの定期点検。その2巡目が進むにつれて、様々な課題が噴出している。4段階の評価で健全度がIIやIIIだった構造物で、急速な劣化や変状の発生が相次いでいるのだ。

 国土交通省は今後、目視点検の効率化や精度の向上に加えて、定量的な診断方法の確立を目指す。期待する技術の1つが計測・モニタリングだ。2020年6月に「点検支援技術性能カタログ」を大幅に改訂。橋桁の変位やコンクリートのひび割れといった変状を定量的に把握・監視する技術を初めて盛り込んだ。その数は53に及ぶ。

 21年は、カタログのさらなる拡充を図る。20年12月に、新たに掲載する技術の公募を始めた。具体的な性能を示し、インフラ管理者による導入の検討を促す。

 計測・モニタリング技術は、定期点検の2巡目や24年度から始まる3巡目の点検に向け、3段階に分けて導入を進める(図1)。まずは、橋やトンネルの異常を即座に検知できる技術を実装する。次に、計測したデータから構造物の健全性を把握する仕組みを構築。最終的には、一連のデータを使って構造物の残存耐力を推定するなど、定量的な診断を目指す。技術者による判断と組み合わせて診断を合理化し、変状の見落としを減らす。

図1■ 計測・モニタリング技術で点検や診断を補助
図1■ 計測・モニタリング技術で点検や診断を補助
当面は、計測・モニタリング技術を用いる「レベル2」へのステップアップを目指す(資料:国土交通省)
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 ただし、モニタリング技術の幅は広い。例えば、光ファイバーで橋桁に生じたひずみ値をリアルタイムで計測・伝達する技術から、桁端の変位が異常値を示した時だけアラートを発するシステムまで様々だ(写真1)。インフラ管理者は、目的を明確にしたうえでモニタリングを実施する必要がある。

写真1■ 富山市の橋で実証中のモニタリングシステム。桁端部に設置して段差の発生などを検知する(写真:富山市)
写真1■ 富山市の橋で実証中のモニタリングシステム。桁端部に設置して段差の発生などを検知する(写真:富山市)
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 例えば富山市は、4段階の評価で健全性が最も悪いIV判定となったある橋で、大規模な補修をせずに桁端部の沈下量を計測するモニタリングシステムを設置。一定値を超えたら撤去すると決めている。

 50万円程度の安価なモニタリングシステムの開発が進むなど環境が整いつつあり、21年は実証実験に取り組む自治体も増えるだろう。