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 陥没や空洞が生じた地点の直下にあった地山の土砂は、どのようなメカニズムでトンネル方向に引き込まれたのか。有識者委員会は施工データの分析に取り掛かった。

 鹿島JVが施工する外環道南行き本線トンネルの泥土圧式シールド機は、東名高速道路そばの発進たて坑から北に進み、中央自動車道の先にある井ノ頭通りの直下まで約9.2kmを掘る。シールド機が東久留米層の掘進に入ったのは2020年3月。発進たて坑から数えて、幅1.6mのセグメントを1870リング組み立てた地点だ(図1)。月200mほどのペースで掘進し、陥没地点直下の2766リング目は20年9月14日に施工した。

図1■ 2587リング以降にカッタートルクが乱高下
図1■ 2587リング以降にカッタートルクが乱高下
シールド機の掘進データ。図の右上にあるL28~L30は後ページ図5の測線番号に対応。陥没地点はL29に当たる。排土量は幅1.6mの1リングごとに算出した(資料:東日本高速道路会社)
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 掘進はまず、シールド機の前面で回転するカッターで地山を削り、カッターの背面に設けた「チャンバー」と呼ぶ空間に掘削土を充満させる。次に、チャンバー内の土砂をスクリューコンベヤーで排出する。チャンバー内にたまった掘削土の圧力で、切り羽の地山が崩れないように支えながら掘進する仕組みだ。

 掘削土の塑性流動性を保つため、起泡剤と水、空気を混ぜて作ったシェービングクリーム状の微細な気泡をシールド機内から切り羽前面の地山に注入しながら施工。チャンバー内には空気を混ぜない起泡溶液を注入した。

 塑性流動性とは、加圧した掘削土が自由に変形、移動できる性質のこと。気泡の採用は、発注者の東日本高速が東久留米層の土質などを基に決めた。

 シールド機の掘進データを見ると、チャンバー内の圧力は目標値である500kPaをほぼ一定に保っていた。一方、20年8月に施工した2587リング付近以降は、シールド機を油圧ジャッキで押す掘進推力が上昇。カッタートルクも大きくばらつくようになった。シールド機が高負荷の状態で掘進したことを意味する。

 ちょうど、鹿島JVが起泡溶液に粘性のある高分子材を添加し始めたタイミングと重なる。泥土化しにくくなったチャンバー内の土砂の塑性流動性を高める必要があったからだ。

 東久留米層の掘進を始めた1870リング付近では24%だった地山の細粒分含有率が、2587リング付近では9%程度に低下。陥没地点直下の2766リング付近ではさらに少なく、4.9%しかなかった(図2)。

図2■ 陥没地点は粘土やシルトの細粒分が極端に減少
図2■ 陥没地点は粘土やシルトの細粒分が極端に減少
シールド機が掘削した地山の粒度分布(資料:東日本高速道路会社)
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 細粒分が少なければ、掘削土の塑性流動性は低下する。れきなどの粒径が大きい土粒子同士がかみ合い、掘進推力やカッタートルクの増大につながった。2607リングの掘進中には、シールド機のカッターが過負荷で停止する事態に陥った。

 鹿島JVは高分子材の添加に加え、気泡を順次増量した。東久留米層の掘進を始めた時点で、掘削土の体積に対して注入する気泡の体積の比率を示す気泡注入率は25%だった。その後、地山の細粒分含有率の低下に伴って、陥没地点付近では50%と大幅に引き上げていた。