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  • AIとビッグデータで管路の劣化リスクを予測診断する
  • 米国で実績を積み2020年から日本国内で有償サービス

 人口減少による財源不足や管路・施設の老朽化、職員の減少・高齢化など、運営環境が年々厳しさを増す水道事業。この窮地を、AI(人工知能)を駆使したサービスで打開しようとするスタートアップ企業がある。2015年に加藤崇氏(写真1)が米国・シリコンバレーで立ち上げたFRACTA(フラクタ)だ。

写真1■ 加藤崇Chairman。複数のロボットベンチャー企業の経営や創業に関わった後、2015年に米国・シリコンバレーでフラクタを創業。AIでインフラの劣化を予測するビジネスを開花させた。20年からは日本でも事業を本格展開している(写真:フラクタ)
写真1■ 加藤崇Chairman。複数のロボットベンチャー企業の経営や創業に関わった後、2015年に米国・シリコンバレーでフラクタを創業。AIでインフラの劣化を予測するビジネスを開花させた。20年からは日本でも事業を本格展開している(写真:フラクタ)

 同社が提供するのは「管路診断ツール」と呼ぶ、水道管の劣化を予測診断するサービスだ。水道管が劣化して破損するリスクをAIや環境ビッグデータを使って算定・見える化し、インフラを所管する顧客に、劣化に起因する事故の予防や維持管理業務の最適化などに役立ててもらう。

 管路診断ツールを用いた劣化予測診断は、以下のような手順で進める。

 まずは水道事業者から水道管の管路網データと漏水事故の履歴データを入手する。次に、水道事業者から入手したデータと、配水区域全域の人口や土壌、交通網、地震履歴といった環境ビッグデータとを組み合わせて、AIによるパターン解析を実施。台帳で管理する管路の単位(以下、単位)ごとに、水道管が1~5年以内に破損する確率を計算する。そして、全単位を破損確率の高い順にランク付けし、管路図上などにヒートマップの格好で表示する(図1)──。

図1■ 配水管の将来の破損をAIで予測
図1■ 配水管の将来の破損をAIで予測
水道事業者から得た管路の情報と、配水区域全域を取り巻く環境に関するビッグデータなどを基に、AIで管路の破損リスクを予測し、可視化する(資料:フラクタ)
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 診断が完了するまでに要する時間は、最短で2カ月程度だ。

 「顧客は管路の劣化リスクの程度を数値で把握でき、それに基づいて更新や修繕の計画を立案できる」。フラクタの樋口宣人日本法人代表はこのサービスの強みをこう話す。