インフラの維持補修費はこれからますます膨れ上がる。従来通りに事業を進めるだけでは、予防保全への移行は難しい。地域に合った維持管理の「担い手」と「担い方」を今こそ模索しなければならない。
道路の維持補修費だけで、国民1人当たり年間で平均3万円以上を負担している──。2014~18年度の道路・都市計画街路事業費のうち、道路改良や橋梁整備、舗装新設などを除いた費用の年間平均を日経コンストラクションが算出。それを生産年齢人口で割って、都道府県ごとに計算した(図1)。
人口の少ない都道府県ほど値は大きい。最高値の秋田県は約7万8000円だ。市町村別だと、1人当たりの負担額はもっと増えるだろう。国土交通省が16年に実施した同様の調査でも、人口の少ない自治体ほど維持補修費は高くなる傾向にあった。
これらの金額を多いとみるか少ないとみるかは、意見が分かれるところだ。ただ付け加えると、インフラは道路だけでなく河川や砂防、海岸、農業施設など他にもある。それらを加えると補修への負担額はさらに増す。さらに、分析したデータは14~18年度の事業費。これは補修が本格化する前の数字だ。今後、維持補修の費用は確実に跳ね上がる。1人当たりの負担額は冒頭の2~3倍になってもおかしくない。
従来のインフラの維持管理は役所が管理して、建設コンサルタント会社などに点検や診断を委託。そして建設会社が施工するのが一般的だった。しかし、人口減少やコロナ禍などによる税収減で、ただでさえ厳しい財政事情の中、従来のやり方では事業は進まない。