2020年に健全度IIIの橋梁補修をほぼ全て完了した熊本県玉名市。直営補修で有名な同市だが、それだけで達成できたわけではない。「分離発注」の採用を組み合わせて、地元の建設会社の力を活用していた。
自治体の職員自らが橋の清掃や補修を手掛ける「橋梁補修DIY」で一躍有名になった熊本県玉名市。今も進化を遂げている。
例えば、エンジン式の高圧洗浄機だけでは橋梁の排水溝から伸びる管の中の詰まりが取れないと分かり、管内にノズルを送り込めるよう延長ホースを購入した(写真1)。さらに、清掃用の水を川から取ると、ごみが洗浄機に詰まって故障することがあったため、現在では200Lのポリタンクを購入。近くの消火栓から水をタンクに移し替えて使っている。
清掃だけでなく橋梁の漏水部の修繕や断面修復、橋面防水なども自分たちで手掛けてきた(写真2、3)。直営施工と建設会社による施工とで補修の品質を比較して、同等の水準を確保できると確認済みだ。
2020年に国土交通省が発表した道路メンテナンス年報によると、市区町村の橋の平均補修完了率は18%だ。それに対して、玉名市は20年にほぼ100%を達成した。市が管理する833橋のうち、健全度IIIは全部で41橋。国の補助金である防災・安全交付金を活用して修繕を終えたのは、そのうち6橋にすぎない(図1)。
では残りの橋梁全てが直営施工による成果だったのかというと、そうではない。玉名市で橋梁メンテナンスに関わる職員は5人しかおらず、作業できる範囲は限られる。