全1431文字

高知県須崎市は、供用中の全ての汚水管きょに運営権を設定した事業を国内で初めて開始した。民間力を最大限に生かして、下水道事業の経営改善を図る。維持管理費用を料金収入で賄えない全国の下水道管理者から注目が集まる。

 2010年に過疎市町村に指定された高知県須崎市。人口減少に起因する料金収入の低下や職員の減少で、下水道施設の保全・改修が立ちゆかなくなっていた。ゲリラ豪雨対策や南海トラフ地震の対策など数多くの課題にも頭を悩ませていた。

 13年度に開かれた高知県下水道経営健全化検討委員会では、「須崎市でこのまま下水道事業を継続するのは困難」と烙印(らくいん)を押されている。

 そんな市が2020年4月から、民間企業の力を最大限に生かして、下水道の経営改善に乗り出した。コンセッションと包括委託、仕様委託を組み合わせた複合型契約による公共下水道施設等運営事業を開始したのだ(図1写真1)。対象施設は、公共下水道と漁業集落排水処理施設、クリーンセンターの3つ。

図1■ 汚水管きょもコンセッションの対象
図1■ 汚水管きょもコンセッションの対象
*2024年度に移行する予定(資料:須崎市)
[画像のクリックで拡大表示]
写真1■ 終末処理場。手前に見えるのは、国土交通省のB-DASHプロジェクトで実証研究のために造った生物膜ろ過併用DHSろ床法による処理施設だ。従来の処理施設の稼働率はわずか26%で、ダウンサイジングが必要だったが、B-DASHのおかげで問題は解消した。処理場の所有権は現在国にあり、2024年度に市に移管される時に運営権を設定する予定だ(写真:須崎市)
写真1■ 終末処理場。手前に見えるのは、国土交通省のB-DASHプロジェクトで実証研究のために造った生物膜ろ過併用DHSろ床法による処理施設だ。従来の処理施設の稼働率はわずか26%で、ダウンサイジングが必要だったが、B-DASHのおかげで問題は解消した。処理場の所有権は現在国にあり、2024年度に市に移管される時に運営権を設定する予定だ(写真:須崎市)
[画像のクリックで拡大表示]

 運営事業者(SPC)はクリンパートナーズ須崎だ。NJSと四国ポンプセンター、日立造船中国工事、民間資金等活用事業推進機構、四国銀行の5者で構成する。事業期間は19.5年で、総事業費は26億9800万円に上る。事業化によって抑えられるライフサイクルコストの比率を指すVFMは約7.6%を見込む。約2億2300万円の市負担額の削減効果がある。

 特筆すべきは、下水道管きょを含む汚水系施設の全てに運営権を設定するコンセッション事業を導入した点だ。国内では初となる。

 運営権の設定では資産評価といって、対象施設の現状を把握する必要がある。ただし汚水管きょは地下に網の目のように張り巡らされており延長が長いため、適切に評価できないケースが多い。ところが須崎市の場合、10km弱と延長が短く、全ての管きょを事前に調査できていたことが功を奏した。

 「須崎市には下水道職員が3人しかいない。処理場とポンプ場の保守・点検にかかりきりで、管きょの維持については手つかずだった。運営事業で、ようやくそこに手が入り始めた。市民サービスの向上につながる」。須崎市建設課の西村公志下水道担当参事はこう説明する。