奈良県田原本町の橋梁で、自治体版ECI方式を導入した複数年包括委託業務が発注された。点検から補修設計、施工確認までを一気通貫で建設コンサルタント会社が担う。地元の施工者の育成に貢献しており、民間力を生かした取り組みとして注目を集める。
奈良県田原本町はオリエンタルコンサルタンツ、大阪市立大学との共同研究で、町が管理する全橋の保全の効率化に向けて、2020年度から新たな取り組みを検証している(写真1)。橋梁長寿命化に向けた定期点検・修繕計画・橋梁補修設計包括委託業務の実施だ。
包括発注の対象は、町が管理する363橋の点検から長寿命化計画の作成、損傷が発覚した橋の補修設計、情報管理まで。それに加えて、18年度までの点検1巡目で健全度IIIと診断された39橋の補修設計なども含む。39橋については5年以内の補修完了を目指す。受注者となる建設コンサルタント会社が、町の全ての橋の維持管理を担うことになる。
22年度までの第1期の業務については、建設技術研究所が受注した。補修工事を担う建設会社とも、複数年の基本協定を結んで、年度ごとに契約を更新していく。
「全ての橋梁を対象に点検から補修設計までを一気通貫で実施する複数年契約はこれまでなかった。加えて、自治体版ECI(アーリー・コントラクター・インボルブメント)方式を導入する点も珍しい」。オリエンタルコンサルタンツ関西支社構造部の森崎静一技師長は、こう話す。
自治体版ECI方式とは国土交通省が実施するECI方式を改良した契約だ(図1)。設計段階から施工者が参画し、施工を前提として設計者が技術協力する一般的なECI方式は、自治体が導入する上で課題があった。
例えば、発注者には施工者からの技術提案を判断する高度な技術力が求められる。加えて、施工者と契約を2度結ぶ手間が生じ、価格交渉が必要になる。施工時には、提案内容を踏まえた施工ができているか否かを確認するための施工監督の力も欠かせない。技術者が少ない自治体にとって対応は困難だった。