市民がテクノロジーを活用して行政サービスの課題を解決するシビックテック。オープンデータ化に伴い、インフラの維持管理に大きな影響を与え始めている。市民が維持管理の新たな担い手として活躍する機会はこれからますます増えるだろう。
2020年4月から、膨大な点群データを誰でも扱えるように無償公開している静岡県。データを活用した様々な提案が市民など第3者から寄せられている。
「これはスゴイ!」。20年12月1日にFacebookでこう投稿したのは、オープンデータ化の立役者である静岡県交通基盤部建設イノベーション推進班の杉本直也班長だ。
杉本班長が感銘を受けたのは、橋の3Dモデルだ(図1)。3次元点群データのオンライン解析技術を持つスタートアップのスキャン・エックス(東京都新宿区)が、公開されている橋の点群データを使って自発的に3Dモデルを作成した。
3Dモデルは照明灯や高欄など部位ごとに分類されており、メンテナンス情報などを後で付加できる。「常々、構造物を点群データ化した後に3Dモデルに変換する『Scan to BIM』のアプローチが重要だと思っていた。点群データを維持管理に活用していくという流れが現実味を帯びてきた」と杉本班長は話す。
ポイントは、自治体から仕事を依頼したたわけではなく、オープン化しているデータを使って、第3者があくまでも自発的に“作ってみた”点にある。
「社内での勉強を兼ねて3Dモデルを作った。既に確立している技術でそれほど価値がないと思っていたが、杉本さんに意見をもらおうとデータを送ったところ、反響があって驚いた。Scan to BIMの研究開発が加速しそうだ」と、スキャン・エックスの宮谷聡CEOは振り返る。
このように仕事とは関わりのない市民が、テクノロジーを活用して、自治体などのサービスの改善や社会課題の解決に寄与するような取り組みをシビックテックという。