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近年、多発している豪雨災害に対し、河川を管理する国や自治体が防災措置を十分に講じていたか否か、被災者は厳しい目を向ける。今回解説するのは、宇治川支流の氾濫で浸水被害を受けた京都府宇治市内の旅館が、河川管理者の市に損害賠償を求めた訴訟だ。

 取水口などに設置された格子状のスクリーンは、目詰まりを起こせば水流を妨げ、氾濫の原因となるリスクをはらんでいる(写真1)。2012年8月に京都府宇治市内の山王谷川で発生した氾濫を巡る裁判では、スクリーンの閉塞が原因だったとして、河川を管理する市の責任が問われた。京都地裁は20年11月19日の一審判決で、市に対して浸水被害を受けた旅館に約1130万円の損害賠償を支払うよう命じた。市は同年12月3日に控訴している。

写真1■ スクリーンの一例。本件とは関係のない貯水施設の取水口に付いている(写真:日経コンストラクション)
写真1■ スクリーンの一例。本件とは関係のない貯水施設の取水口に付いている(写真:日経コンストラクション)
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 問題となった山王谷川は宇治川の支流で、合流部までの100mほどの区間が暗きょとなっている。閉塞したスクリーンは、暗きょ内への異物流入を防ぐため、暗きょ区間の入り口部分に設けられていた。宇治川への合流部付近には、光流園静山荘(以下、静山荘)という旅館と、流域の内水を宇治川に流すための塔ノ島第一排水機場がある(図1写真2)。

図1■ 位置図
図1■ 位置図
山王谷川は暗きょとなって本流の宇治川と合流する。2012年の豪雨でその入り口部のスクリーンが閉塞し、山王谷川が氾濫した
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写真2■ 山王谷川の河口付近を宇治川の右岸から遠望。旅館の光流園静山荘は山王谷川の氾濫で床上浸水の被害を受けた(写真:日経コンストラクション)
写真2■ 山王谷川の河口付近を宇治川の右岸から遠望。旅館の光流園静山荘は山王谷川の氾濫で床上浸水の被害を受けた(写真:日経コンストラクション)
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 事の発端は12年8月13日の夜から14日未明にかけて、京都府南部の宇治市などを襲った豪雨だ。上流から流れてきた土砂や枝葉によって山王谷川のスクリーンが閉塞して水があふれ、静山荘の地階と1階が床上浸水の被害を受けた。