メガソーラー建設で工事用道路の橋を架けるため河川占用の許可を求めた事業者に対し、河川管理者の伊東市が不許可とした。事業者は市を提訴したものの、建設を巡る地元住民との対立などが控訴審で響いて、実質的に敗訴した。
大規模な構造物を整備する事業者にとって、事業計画を現場付近の住民に説明し、一定の理解を得る努力は欠かせない。住民の反発を招けば、行政の許認可にとどまらず司法の判断にも影響を与えかねないからだ。
裁判所は事業の適否を判断する際、形式的な「法令適合性」だけでなく、住民や行政の動向を視野に入れた価値判断に基づいて「社会的妥当性」も考慮する場合がある。住民への説明には構造物の施工者や設計者が関わることが多いだけに、建設実務者にとって軽視できない問題だ。
今回は、一般住民が容認していないことを理由に、自治体が民間事業にストップをかけた行為を実質的に是認した判決を取り上げる。問題となっているのは、外資系事業者の伊豆メガソーラーパーク(静岡県伊東市)が伊東市内で計画している太陽光発電施設「伊豆高原メガソーラーパーク発電所」だ。既に準備工事などが着手済みだ(写真1、2)。
同社がウェブサイトで明らかにしている事業計画によると、設置する太陽光発電パネルは約12万枚、発電量は約40.7MWとなる予定だ。
このような大規模な太陽光発電施設の建設は、山林開発などで自然環境を損なうリスクを伴うため、地元住民の反発を招くことがある。
伊豆メガソーラーの事業計画が明らかになると、景観や環境に与える影響などを懸念する住民から2万5000筆を超える建設反対の署名が伊東市に提出された。市議会も17年7月、メガソーラーの建設反対を決議した。
こうした地元の反発のなか、同社は現場付近を流れる八幡野川に工事用道路の橋を架けるため、河川管理者の市に河川占用許可を申請した(図1)。
しかし、市は19年2月に「現時点では社会経済上必要やむを得ないと認められるに至らない」という理由で不許可処分とした。伊豆メガソーラーはこれを不服とし、処分取り消しを求めて市を提訴した。