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反対側の桁端部だけ補強していた

 長島側の破断は、老朽化に伴う補修・補強工事のため06年2月に実施した超音波探傷試験で発見した。外観に変状が現れていたわけではない。橋の両端部でアスファルト舗装や桁の上面をはつり、PC鋼棒の頭部を露出させて試験した。

 長島側では、18本の鉛直PC鋼棒のうち7本が破断していた。5本は反射エコーが得られず計測不能。破断していないと確認できたのは6本だけだった。鉛直PC鋼棒とコンクリートの隙間から水が浸入。PC鋼棒が腐食し、破断したとみられる(図3)。室津側では、破断は確認されなかった。

図3■ 15年前に反対側の桁端部で破断
図3■ 15年前に反対側の桁端部で破断
2006年に長島側で鉛直PC鋼棒の破断が発覚した後、コンクリートをはつって全体の半数の9本を調査した。破断した鋼棒の欠損率は最大19.5%、最小で4.8%だった。赤枠は日経コンストラクションが加筆(資料:山口県)
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 県は、「当時の調査で、長島側と室津側での違いを比較した分析は行っていない」(道路整備課)。長島側特有の事情が特定できていないのなら、室津側でも近いうちに同様の破断が起こると想定するのが自然だ。

 ところが県は、長島側だけで補強工事を実施。PCケーブル4本を外付けして、桁を橋台に固定した(写真4)。室津側では同様の対策を施さなかった。

写真4■ 長島側の補強工事の様子。外付けケーブルの定着部を施工している(写真:山口県)
写真4■ 長島側の補強工事の様子。外付けケーブルの定着部を施工している(写真:山口県)
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 その理由について、県は「室津側では超音波探傷試験で破断が確認されず、定期点検などで外観に変状が見られなかったため」と説明する。

 超音波探傷試験で判別できるのはPC鋼棒の破断だけで、腐食の状態までは分からない。外観に変状が現れなくても、内部で腐食は進む。

 それでも、室津側の鉛直PC鋼棒が大丈夫だと判断した理由は何か。改めて県に問い合わせたが、前述の回答以上の説明はなかった。

 一部のPC鋼棒が破断しても、いきなり事故につながるわけではない。長島側では少なくとも7本破断した状態で持ちこたえていた。破断を定期的にチェックしていれば、今回の事故を防げた可能性がある。しかし県は06年以降、超音波探傷試験を一度も実施していない。結局、県が対策を怠っている間に室津側でも破断が起こり、桁が跳ね上がった。