全2914文字
PR

過去の破断には一切触れず

 県の不適切な対応が透けて見える長島側の破断について、県は自ら公表していない。今回の事故後に設置した復旧検討会議(座長:麻生稔彦・山口大学大学院教授)で報道陣に公表した資料でも、15年前の破断には一切、触れていない。

 当時、破断が発覚したときにも、その事実を公表していなかった。加えて、交通規制などの措置も取っていない。補強工事が終わる06年10月までの8カ月、機能していると確認できた鉛直PC鋼棒が6本だけの状態で供用を続けていた。

 県は、「残存する鉛直PC鋼棒6本で設計荷重に抵抗できるか照査を行い、当面の通行に支障は生じないと判断した」(道路整備課)と説明する。残る6本の腐食の可能性については、「破断位置付近の橋台前面をはつって状況を確認し、破断している鋼棒の最大の断面欠損率を設計上の破断荷重に乗じた」と付け加えた。

 最も腐食が進んでいたPC鋼棒の欠損率は20%だった。つまり、18本うち有効なPC鋼棒が6本しかなく、それらの断面が全て80%に減っていても、計算上は持ちこたえるという。

 そうは言っても、計算上は大丈夫なはずの80%以上の断面を持つPC鋼棒が現実に7本も破断しているわけだ。残った6本で少しでも腐食が進んでいれば、相応のリスクがあると考えられる。照査の結果だけでは、十分な説得力がない。

 幸い、補強が終わるまで事故は起こらなかったが、交通規制しなかった県の対応には疑問が残る。

リスクマネジメントの視点が欠如

 上関大橋のようなドゥルックバンド橋が造られたのは、1960~70年代が中心だ。三井住友建設の春日昭夫副社長は2018年の日経コンストラクションインタビューで、この形式の橋について「日本人の技術者も知らない人が多い。橋の設計思想が受け継がれていない」と語っている。さらに、同社が施工した27橋について、「超要注意構造物」として毎年、自主点検していると明かした。

 上関大橋を施工したのは、同社の前身の住友建設だ。自主点検の状況に関して三井住友建設に取材を申し込んだが、断られた。同社の自主点検について、県は「承知していない」と答えている。

 復旧検討会議座長の麻生教授は、「損傷が致命的となる箇所が、外から見えないのが最大の問題だ」と話す。このような橋に対しては、「外から点検できるように構造を変えることも視野に入れないといけない」(麻生教授)

 同会議の委員を務める土木研究所構造物メンテナンス研究センターの石田雅博上席研究員が指摘するのは、リスクマネジメントの必要性だ。リスクマネジメントでは、事象が起こる確率と、事象がもたらす結果の重大性の2つを考慮して、対策の優先順位を検討する。「災害対策にはリスクマネジメントの考え方があるが、維持管理ではまだそれが十分ではない」(石田上席研究員)