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ローラー内部が硬過ぎた

 では、なぜ製造時にひびが入ったのか。その謎を解くヒントは、「道路橋支承便覧」(日本道路協会)の記述にあった。

 ローラーを製造する際、まずは全体を焼き入れして硬化させる。その後、外周部をさらに硬くするため、表面焼き入れを施す。便覧では、ローラー内部の硬度は外周部の40~50%が望ましいと述べている。全体が硬いと、かえって脆弱になる。

 硬度の指標である「ビッカース硬さ」の規格値は、外周部が505~640、内部は230以上だ。破損したローラーの硬さを調べると、内部でも500近くあった(図3)。内部の規格値に上限はないので基準は満たしているものの、外周部の40~50%に抑えられていない。

図3■ ローラーの内部まで硬くなっていた
図3■ ローラーの内部まで硬くなっていた
南西側ローラーの硬さの測定結果。舞鶴市の資料を基に日経コンストラクションが作成
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 「焼き入れの後、外側が硬いまま内部が冷えて縮もうとし、引っ張り応力がかかってひび割れが生じたと考えられる」。市が設置した専門家会議の会長を務める舞鶴高専の玉田和也教授はこう説明する。

 硬過ぎたとはいえ、品質基準は満たしているので、支承メーカーの責任を問うのは難しいという。舞鶴市は、風評被害などを恐れてメーカー名を公表していない。

 こうした市の姿勢に対し、玉田教授は「他の橋への影響を調べて対策を取る必要があるのに、メーカー名が分からなければ先に進めない」と不満を漏らす。

他の橋での使用実態は不明

 ただ、破損した支承の写真を見ると「KSK」のロゴが入っているので、呉羽製鋼(兵庫県伊丹市)の製品だと分かる。舞鶴クレインブリッジと同時期に製造したローラー支承の納品先について日経コンストラクションが同社に問い合わせたが、当時の記録が残っていないので分からないという。同社からユーザーへの注意喚起もしていない。

 それでも、舞鶴の事故を受けて独自にローラー支承を点検した管理者もいる。京都府道路公社は、呉羽製鋼製の支承を使っている舞鶴由良川大橋を20年12月に緊急点検し、異常がないと確認した。舞鶴クレインブリッジの支承破損を報じた日経コンストラクション記事の写真を見て、同じメーカーの支承を使っている橋があると知った。

 舞鶴クレインブリッジでは支承の破損が判明した後、ローラーを撤去して、そこに鉄板を挟み込む応急処置を施した。橋は、現在も通行止めが続いている。今後の本復旧では、ローラーだけを交換する予定だ。