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4年前の定期点検で健全度が最高のIと判定されながら、劣化で床版が抜け落ちた。前兆が表面に現れにくい「土砂化」だったため、劣化の進行に気づかなかった。先手を打って対策が取れるよう、非破壊で兆候を検出する技術の開発も進んでいる。

 知らないうちに床版の劣化が進み、気づいたら穴が開いて抜け落ちていた──。こんな事態に陥ったのが、広島県が管理する国道183号「寿橋」(広島県三次市)だ。

 2020年11月3日、厚さ16cmのコンクリート床版が抜け落ち、舗装が縦30cm、横12cmにわたって陥没した(写真12)。県は急きょ、橋を全面通行止めにした。

写真1■ 抜け落ちた寿橋の床版を下から見上げる。周囲に黒い染みが生じている(写真:広島県)
写真1■ 抜け落ちた寿橋の床版を下から見上げる。周囲に黒い染みが生じている(写真:広島県)
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写真2■ 陥没した寿橋の路面。鉄筋だけを残して舗装が床版ごと抜け落ちた。信号待ちする大型車の荷重が影響したとみられる(写真:広島県)
写真2■ 陥没した寿橋の路面。鉄筋だけを残して舗装が床版ごと抜け落ちた。信号待ちする大型車の荷重が影響したとみられる(写真:広島県)
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 寿橋は、江(ごう)の川に架かる全長176.5mの橋だ。1968年に完成した。鋼単純箱桁橋と鋼3径間連続鈑桁橋で構成する。2016年度の定期点検では、一部で床版のひび割れや鉄筋の露出を確認したものの、橋全体の健全度は4段階で最も高いIと判定した。穴が開いた箇所には当時、異常は見られなかった。

 しかし、健全度がIであっても、床版の内部ではじわじわと劣化が進行していた。IやIIと判定された県管理の橋で、劣化が原因で通行止めとなったのは、これが初めてだという。劣化した箇所を除去して床版を打ち直し、20年11月13日に通行止めを解除した。

 事故の後、現地を調査した広島大学大学院の半井健一郎教授によると、陥没の原因はコンクリート床版の「土砂化」だという。土砂化とは、コンクリートが骨材とモルタルに分離し、土砂のような状態になる現象のことだ。床版上に入り込んだ水や塩分、繰り返しかかる輪荷重などが原因となる。

 「寿橋では床版上のアスファルト舗装が傷んでいたので、そこから水が入り込んだようだ」と半井教授は言う。交差点に近い場所が陥没しているので、信号待ちする大型車の荷重も影響したとみられる。

 コンクリート床版の土砂化は一般的に、床版上面の帯水が引き金となる。上面でコンクリートの劣化が始まり、水を帯びた土砂化層が下へ広がっていく(図1)。最後は鉄筋だけ残して、土砂化したコンクリートが抜け落ちる。全国でも時折、こうした事故は起こっている。

図1■ 床版上面の帯水が土砂化の元凶
図1■ 床版上面の帯水が土砂化の元凶
一般的な土砂化のプロセス。土木研究所構造物メンテナンス研究センターの資料を基に日経コンストラクションが作成
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