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点検の7カ月後に鋼材破断

 不正による見落としは極端な例だが、PC鋼棒が破断した上関大橋のように、定期点検で状態をしっかり把握できていないケースは多い。維持管理の問題に詳しい首都高速道路技術センターの高木千太郎上席研究員は、次のように語る。

 「5年間で全ての橋を点検する必要が生じたので、とにかく数をこなそうとして点検の質が下がったのではないか。今になって、そのひずみが出てきている」

 高木上席研究員は、点検結果に疑問のある例として、「犬吠橋」(高知県北川村)を挙げる。1924年に完成した鋼単純上路式トラス橋だ。

 橋を管理する高知県は、2016年2月の定期点検で、劣化は認められるが緊急措置の必要はないIIIと判定。ところが7カ月ほどたった16年9月に突然、斜材が4カ所で破断した(写真1図2)。主構造がうねうねと波打ち、一歩間違えば落橋などの大事故につながるところだった。「点検では当然、IVと判定すべきだった」(高木上席研究員)

写真1■ 斜材が4カ所同時に破断した犬吠橋。トラス構造が波打った。現在も通行止めが続いている(写真:高知県)
写真1■ 斜材が4カ所同時に破断した犬吠橋。トラス構造が波打った。現在も通行止めが続いている(写真:高知県)
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図2■ 破断する7カ月前に定期点検を実施
図2■ 破断する7カ月前に定期点検を実施
2016年2月6日に実施した犬吠橋の定期点検の記録。上の写真は、後に破断した馬路村側の斜材を上流側から見たところ。損傷程度は、a~eの5段階で悪い方から2番目のdだった。高知県の資料に日経コンストラクションが加筆
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 一方で県は、定期点検のIII判定に問題はなかったと考えている。破断の直接の原因が、重量制限を大幅に超えるトレーラーの通行だと判断しているからだ。トレーラーの荷姿から、総重量は60t程度だったとみる。このトレーラーは、20tを超える特殊車両に必要な通行許可を取っていなかった。

 県によると、これまで犬吠橋に通行許可を出した最も重い車両は、総重量約45tだった。「60tの車両で申請が来ても、間違いなく許可しなかった」(高知県道路課)。しかし、過積載の車両が1回通っただけで主構造が破断するような橋が供用されていたとすれば、それも問題だ。