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III判定の橋ゼロを目指す

 定期点検制度がうまく機能していれば、本来、通行止めなどの緊急措置はなくなるはずだ。橋を例に、その理屈を説明しよう(図3)。

図3■ 点検2巡目には緊急措置がなくなるはずだが…
図3■ 点検2巡目には緊急措置がなくなるはずだが…
橋の定期点検制度の概念図。I~IVの4段階で判定する健全度が、次回点検までの5年間で2段階以上悪化する例はないと想定した。IIIまたはIVと判定した橋は、原則として次回点検までに何らかの「措置」を取る。「措置」には、橋の廃止や通行規制なども含まれるが、ここでは全て補修すると単純化して図示した。取材などを基に日経コンストラクションが作成
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 現行の制度では、道路管理者が5年に1回の頻度で定期点検を実施し、橋の健全度をI~IVの4段階で判定する。IV判定の橋は即座に、III判定の橋は5年後の次回点検までに補修するのが原則とされている。5年間で健全度が2段階以上悪化する例はないと考えれば、III判定の橋を全て補修すると、次の点検でIV判定はなくなる。

 国交省は将来、劣化が深刻になる前に補修する「予防保全」に力を入れる。予防保全としてII判定の橋を補修していけば、新たなIII判定は出なくなる。国交省では53年度までにIII判定をゼロにする目標を掲げる。国土強靱化の予算を重点的に投じることで、達成時期を8年前倒しした。

 ただこれは、物事を極めて単純化した理想の姿だ。実際にはこの通りに進んではいない。定期点検が2巡目に入った現在でも、部材の破断や陥没などが起こり、急きょ通行止めが必要となるケースは後を絶たない。定期点検でIやIIだったからといって、安心はできない。

 こうした問題に対処するには、リスクに応じた柔軟な措置が必要だろう。例えば上関大橋のように、構造上極めて重要な部材が近接目視で確認できない場合には、先手を打って補強しておくのも手だ。コンクリート床版の土砂化のような内部で進行する劣化については、非破壊検査を併用するといった対応が考えられる。その他、不正や手抜きを許さない体制作りも不可欠だ。