コンクリートの品質を確保する丁寧な施工体制を確立させ、環境に合わせた劣化対策を設計で盛り込む──。復興道路では品質と耐久性を確保する取り組みが定着し、試行工事から手引作成、水平展開までを実現した。初期の変状が大幅に減るといった効果も表れており、全国へ取り組みが波及している。
復興道路の全線開通が見えてきた2020年。岩手県を通る尾肝要(おかんよう)普代道路の普代川大橋で、復興道路の取り組みを象徴する構造物が完成した。4径間の鋼箱桁に打設する鉄筋コンクリート(RC)床版で、幅0.2mm以上のひび割れがゼロだった(写真1)。
現場所長を務めた西武建設土木事業部東日本工事課の木村伸貴担当次長は、次のように振り返る。「コロナ禍で作業員を集めるのも大変だったが、学識者の助言などを踏まえて非常に奇麗な出来に仕上がった」
試験施工を実施し、バイブレーターのかけ方を徹底。養生期間を1カ月と通常よりも長めに設定し、湿潤状態を保った(写真2、3)。橋長が254mと長いので、7区間に分けて打設。その順番にも配慮した。
ただそれだけで「ひびゼロ」を実現できたわけではない。材料にも手を加えた。「ひび割れが懸念される2スパンは、膨張剤の添加量を通常の20kgから25kgに増やした」と木村次長は言う(図1)。膨張剤を増やすと凍害抵抗性が落ちるため、試験施工で問題がないことを確認して本施工に臨んだ。
他にも、壁高欄の目地を変更した。国土交通省東北地方整備局が19年に作成した「東北地方におけるRC床版の耐久性確保の手引き(案)」では、負曲げの影響を考慮して、中間支点上に伸縮目地を採用するよう明記している(図2)。
しかし、供用中の橋で伸縮目地から入ったひび割れが床版まで延びるケースが散見されていた。耐久性に悪影響を及ぼすため、普代川大橋では全てひび割れ誘発目地に変更。結果的に床版まで延びるひび割れはほぼゼロに抑えられたという。