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復興交付金の効果促進事業や取り崩し型復興基金で、各自治体は地域の特性に応じた復興を進められた。復興交付金の基幹事業では買収で復興街づくりを進める津波復興拠点整備事業が、効果を発揮している。ただし基幹事業の1つである土地区画整理事業については、課題も残った。

 2011年3月、宮城県気仙沼市は津波と火災の複合災害で大きな被害を受けた。夜の気仙沼港が“火の海”となった衝撃的な映像が、記憶に残る読者も多いだろう。沿岸にある燃油タンクなどが津波の影響で倒れて、流れ出た油が火災を引き起こす原因となった。

 同市は朝日町にタンクを再建し、19年6月に無事、「気仙沼油槽所」の運用を開始できた(写真1)。復興の原資となったのが、国が11年12月に創設した復興交付金だ。総額は3兆円超。国の補助以外の部分は地方交付税の加算によって手当するため、地方負担は実質ゼロとなる。

写真1■ 津波復興拠点整備事業の効果促進事業で津波防護対策を実施した燃油タンク(写真:日経コンストラクション)
写真1■ 津波復興拠点整備事業の効果促進事業で津波防護対策を実施した燃油タンク(写真:日経コンストラクション)
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 同交付金は基幹事業と効果促進事業で構成される。前者は復興地域づくりに必要なハード事業だ。国土交通省の所管だと土地区画整理や道路、下水道など23の事業メニューがある(図1)。自治体は被災地区のニーズに合った復興事業を選ぶ。

図1■ 国土交通省所管の復興交付金基幹事業の4つは使わず
図1■ 国土交通省所管の復興交付金基幹事業の4つは使わず
(資料:復興庁)
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 基幹事業と関連して、地域の特性に応じた主体的な事業を進めるために設けられたのが、効果促進事業だ。

 気仙沼市朝日町では基幹事業として、復興拠点となる市街地を整備する「津波復興拠点整備事業」を適用した。そして、タンクの津波防護対策は効果促進事業で進めた。地盤改良し、タンクの基礎やタンクを取り囲むPC(プレストレスト・コンクリート)壁を建設した(図2)。

図2■ 津波防護対策に効果促進事業として4.6億円
図2■ 津波防護対策に効果促進事業として4.6億円
気仙沼市朝日町における造船施設・燃油施設の事業費。津波防災拠点施設整備関係費を一部除く(資料:気仙沼市)
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 「復旧・復興では使い勝手の良い復興交付金制度がうまく機能したと考える。中でも災害後の原形復旧という枠を超えて、社会課題の解決に一歩でも近づけるという意味で、効果促進事業は不可欠だった」。菅原茂・気仙沼市長はこう振り返る。