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会計検査院から工事費が過大だと指摘されたのが、栃木県鹿沼市の雨水貯水槽だ。側壁の自重や摩擦力を考慮しなかったため、アンカーの負担力が過大になった。法面に適用する「5m間隔」の基準に漫然と従った点も、経済性を損ねる一因となった。

 貯水槽にアンカーを配置──。会計検査院の調査官は、栃木県鹿沼市が整備した調整池の設計を見て「珍しい」と感じた。

 「公共工事の検査に10年くらい携わっているが、アンカーといえば法面に打つケースが多く、地面に打つ工事は初めてだった」と、その調査官は明かす。掘り込み式の貯水槽なので、躯体の浮き上がりを防ぐため、底版から地盤にアンカーを打ち込んでいた。

 施工例の少ない施設は設計ミスなどが起こりがちなので、会計検査で注目されやすい。この案件でも、構造計算の条件設定などでミスが発生。経済性の検討も不十分で、アンカーの本数が過大になっていると判明した。

 問題の施設は、鹿沼市が2013年度から17年度にかけて、市内の深津地区に工事費約5億8000万円で整備した千渡雨水第三調整池だ。面積4740m2、底版下面までの深さ4.6mのコンクリート製貯水槽を構築した(写真1)。設計は、オリジナル設計(東京都渋谷区)に委託。日本下水道協会や地盤工学会などの技術基準に従って設計を進めた。

写真1■ 千渡雨水第三調整池。下向きの鉛直力として側壁や進入路の重さなどを加算せず、必要以上の本数のアンカーを打設した(写真:鹿沼市)
写真1■ 千渡雨水第三調整池。下向きの鉛直力として側壁や進入路の重さなどを加算せず、必要以上の本数のアンカーを打設した(写真:鹿沼市)
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 施設周辺は地下水位が高く、躯体には浮かび上がろうとする揚圧力が作用する。この上向きの揚圧力から、貯水槽躯体の自重や側壁と地盤との間の摩擦力など下向きの力を差し引いて、アンカーが負担する力を算出する(図1)。その結果を基に、アンカー1本当たりの設計耐力と打設本数の組み合わせを決めた。

図1■ 側壁の荷重や背面土との摩擦力も考慮
図1■ 側壁の荷重や背面土との摩擦力も考慮
アンカーの負担力などを適正に算定した際の計算モデル(資料:鹿沼市)
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 市は、アンカーの打設間隔について、「設置間隔の目安は最大で5m」と記載している地盤工学会の基準を採用。5m間隔で、設計耐力350kNのアンカーを184本打設する設計とした(図2)。

図2■ アンカーの設置数は184から101に
図2■ アンカーの設置数は184から101に
右が会計検査院の示した最も経済的なアンカー設計。耐力350kNのアンカー184本の元設計に対し、会計検査院は450kNのアンカー101本で済ませた(資料:鹿沼市)
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