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新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、2019年度の検査報告では設計ミスなどの指摘件数が大幅に減った。それでも単純ミスは相次いでおり、調査官の間では自治体職員などの技術力低下への懸念は根強い。似たようなミスを連続して取り上げる例も多いので、過去の指摘事項は十分にチェックしておきたい。

 会計検査院が2020年11月に公表した19年度の検査報告では、土木の設計・施工ミスの指摘が大幅に減った(写真1図1)。国土交通省と農林水産省が関係する不当事項の指摘は、17年度と18年度が共に13件だったのに対し、19年度は6件と半減した。

写真1■ 会計検査院は、国の予算執行を検査した結果を「決算検査報告」にまとめ、毎年11月に公表している(写真:会計検査院、日経コンストラクション)
写真1■ 会計検査院は、国の予算執行を検査した結果を「決算検査報告」にまとめ、毎年11月に公表している(写真:会計検査院、日経コンストラクション)
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図1■ 新型コロナの影響で指摘数が大幅減
図1■ 新型コロナの影響で指摘数が大幅減
会計検査院が指摘した設計・施工ミスの件数。国土交通省と農林水産省関連の不当事項から、土木関連の件数をまとめた。カッコ内は施工に関する指摘件数。「水路」は函きょ・管きょ・ボックスカルバート、「護岸・根固め」は頭首工・護床工・波除堤、「道路・舗装」は落石防護柵、「貯水槽・調整池」は貯留槽・汚水処理槽をそれぞれ含む。会計検査院の資料を基に日経コンストラクションが作成
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 最大の要因は、新型コロナウイルスの感染拡大だ。会計検査では通常、検査院の調査官が現地に赴き、構造物などを直接見て、設計ミスや施工ミスがないかチェックする。この実地検査が、新型コロナの影響で思うように進まなかった(図2)。20年4月~5月は実地検査を全て中止し、6月以降も検査対象を限定した。

図2■ 新型コロナで実地検査が激減
図2■ 新型コロナで実地検査が激減
2019年度の検査報告に向けた実地検査の実績(資料:会計検査院)
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 「公共工事の検査は、最終的に現場が決め手となる」。元会計検査院調査官の芳賀昭彦・経済調査会参与はこう説明する(写真2)。例えば、19年度の検査報告で指摘を受けた宮崎県の落石防護柵では、背後の地形が設計条件と異なっていた。これも、調査官が現地を見て判明した。

写真2■ 元会計検査院第四局農林水産検査第四課長の芳賀昭彦・経済調査会参与(写真:日経コンストラクション)
写真2■ 元会計検査院第四局農林水産検査第四課長の芳賀昭彦・経済調査会参与(写真:日経コンストラクション)

 「相変わらず、現場をきちんと確認していない。確認しても動かない」と、芳賀参与は苦言を呈する。例として、19年度の検査報告で指摘された高知県宿毛市の頭首工を挙げる。

 「施工中、仮締め切りの中に水がどんどん入っていながら、設計変更をしない。目の前で見ているのに動かない」(芳賀参与)。その結果、埋め戻し土の締め固め不足が生じた。

 一方で、会計検査院第三局国土交通検査第四課の柳原一久課長は、「業務量が増えて、担当者がなかなか現場に足を運べないようだ」と話す。かつて公共事業の縮小と共に、自治体などは技術系職員を減らしてきた。しかし近年、国土強靱化への集中的な予算措置などで事業量が増大している。「コンサルタント会社に設計を外注する場合でも、やはり自分の目で確認することが大事だ」と柳原課長は強調する。

 現役の調査官の間では、自治体職員の技術力低下への懸念が広がっている。ある調査官は、「よく理解できていない担当者が誤った説明をして、隣にいる上司が『それは間違っている』と注意する例も多い」と打ち明ける。

 「構造計算のシステム上のチェックで『NG』表示が出ているのに、そのまま造っているケースもまれにある」。こう指摘するのは、会計検査院第三局国土交通検査第三課の安部公崇課長だ。「量が多くて大変だとは思うが、コンサルタント会社から受け取った設計図書を、1回はしっかり確認してほしい」(安部課長)