完成から間もない構造物が倒壊したり、竣工間際にずさんな施工が発覚したりする事例が相次いでいる。施工不良は建設会社の責任だが、検査や段階確認で気づけなかった発注者にも一定の責任がある。現場の失敗はなぜ見逃されたのか。工事のプロセスを検証した。

特集
現場の失敗 検査で見抜けず
目次
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市の不備が露呈し衝撃の“逆転”判決
4カ月前に完成した擁壁の倒壊で、発注者の群馬県渋川市は施工不良と見なし、建設会社を1年間の指名停止に。異議を唱えた建設会社が損害賠償を求めて提訴した結果、倒壊原因は市にあると認める判決が出た。現場の確認や契約に対する市のチェックの甘さが、法廷で明らかになった。
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消えた立ち会い検査を誰も指摘せず
中央自動車道をまたぐ複数の橋の耐震補強工事で鉄筋不足が判明し、発注者の責任も問われている。本来は必須であるはずの立ち会い検査を実施しないまま、工事が進んでいたからだ。検査願などを提出しないで作業した施工者に対し、発注者のずさんな検査体制が明らかになった。
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計画に掲げた段階確認の機会逃す
1万カ所を超える施工不良が発覚して衝撃が広がった千曲川護岸の復旧工事で、再施工が進む。発注者の国土交通省は、あくまで施工者の大林組のミスで施工不良が生じたと強調する。当初は6回の計画だった段階確認が1度になるなど、早期発見できなかった理由が浮かび上がってきた。
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受発注者でコミュニケーションを
公共工事は受発注者間の請負契約に基づき、施工者が目的物を完成させるための一切の責任を負う「自主施工の原則」が基本になっている。一方、発注者は施工者が契約を適正に履行しているかどうか、竣工時の検査に加え、施工途中の段階確認や監督を実施する必要がある。ところが、発注者が検査などで見抜けず、竣工後や竣工…