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建設コンサルタント業界では、新型コロナウイルスによる市場の冷え込みはほとんどなかった。2020年下期決算の会社でも、主力の国内官公庁業務で売り上げを伸ばし、7割が増収となった。しかし、この傾向は長くは続かないとみて、事業基盤を強化する動きが出てきた。

 新型コロナウイルスが猛威を振るった2020年。産業界では業績悪化で苦戦する会社が続出した。建設コンサルタント業界には、どのような影響が出たのか──。

 結論から言うと、主要各社の業績への影響は軽微だった。むしろ、新型コロナの感染拡大前から続く国内官公庁業務の好調な受注が下支えとなり、全体的に業績を伸ばしている。

 日経コンストラクションは20年に期末を迎えた決算の動向について、主要な建設コンサルタント会社にアンケートを実施。政府が初めての緊急事態宣言を解除した後の6~12月に期末を迎えた会社の7割近くで、売上高と営業利益が前期を上回った(図1)。

図1■ 売り上げ、利益ともに7割が前期比で増加
図1■ 売り上げ、利益ともに7割が前期比で増加
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を見るため、政府が2020年4~5月に出した緊急事態宣言の解除後の6~12月に決算期を迎えた会社を対象に、売上高と営業利益を前期と比較した。対象は売上高が112社、営業利益が110社。決算期を変更した会社や合併など組織を改編した会社は、前期との単純比較ができないため対象から除いた。調査概要は「建設コンサルタント会社ランキング」。日経コンストラクションの調査に基づいて作成した
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 増収・増益を達成した代表格は、いであだ。20年12月期に、売上高は前期比で2.5%増の194億円、営業利益は同15.7%増の22億円。受注高は同3%増の207億円だった。売上高、営業利益、受注高ともに過去最高だ。田畑彰久社長は、「防災・減災や気候変動の対策など得意分野に、政府の予算が重点的に配分された影響が大きかった」と振り返る。

 建設技術研究所も政府の国土強靱化政策を追い風に業績を拡大した。20年12月期の売上高は、前期比で7.9%増の443億円。テレワークの推進などで旅費交通費が減り、営業利益は同33.6%増の48億円と大幅に増えた。鈴木直人取締役執行役員管理本部長は、「一部の業務で工期延長が発生したが、業績への影響はなかった」と説明する。

 細かく見ていくと、もちろん決算期による多少の濃淡はある。日経コンストラクションは決算期による新型コロナの影響を調べるため、企業数が多い6、9、12月を期末とする会社を抽出。各社の売上高を前期と比較した。売上高が増えた会社の割合は、6月期が76%、9月期が60%、12月期が50%だった。決算期が後になるほど、増収企業の割合は低下した(図2)。

図2■ 決算期が年末に近づくほど増収の会社が減る
図2■ 決算期が年末に近づくほど増収の会社が減る
企業数が比較的多い6、9、12月を決算期とする会社が対象。全売上高の他、国内官公庁、国内民間、海外の各業務の売上高を前期と比較。前期よりも増えた会社の割合を示した。日経コンストラクションの調査に基づいて作成した
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 要因は、国内民間業務と海外業務の不振だ。国内官公庁業務は、いずれの月も増収企業の割合が70%台に乗った。一方で、国内民間業務は9月期が50%、12月期が29%にとどまる。海外業務は9月期が15%、12月期が22%と低調だった。

 特に深刻な状況に陥ったのは海外業務だ。国際協力機構(JICA)は20年3月、受注企業に対して、社員らの全員帰国と渡航禁止を要請。その影響で、ODA(政府開発援助)案件の中断や遅延が相次いだ。影響は20年後半まで続いた。各社がJICAの容認の下、渡航を本格的に再開したのは21年の年明け前後だった。

 海外案件では、ODAを主力に位置付けている会社は少なくない。そのため、海外業務での減収が目立った。日経コンストラクションの調査では、20年6~12月期決算の会社の7割で、海外業務の売り上げが減った。