ドローンや人工衛星による画像、SNS(交流サイト)に集まる「口コミ」など、防災に役立つ情報が巨大化している。集まったビッグデータを従来からの防災インフラにどう融合させるのか。AI(人工知能)などを駆使して災害対応を革新する「防災テック」に注目が集まる。加速する防災テックの最前線を探った。

特集
データが革新する災害対応
防災技術2021
目次
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官民連携で「防災テック」を加速
官民のマッチング支援や防災技術の共通基盤の整備など、国は「防災テック」を後押しする。中長期的な視点から、防災テックの将来像や実装に向けての課題の検討も進めている。防災と先端技術の双方の知見を有する民間企業同士の協業も不可欠だ。
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1cm単位の浸水予測を数時間で
AI(人工知能)技術を活用することで、浸水被害の予測は従来よりも格段に速く高精度になる。被災状況の把握に使えば、罹災(りさい)証明の発行や保険金支払いの迅速化にもつながる。防災面の直接的な効果だけでなく、作業するスタッフの負担軽減も図れる。
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2種類の衛星データで被害を確認
一定の周期で地表を観測する人工衛星はインフラのモニタリングと親和性が高い。2種類の衛星データを組み合わせることで、災害時にも広域かつ迅速に対応できる。日本上空を周回する人工衛星の予定を踏まえ、適切な衛星データを選び出す。
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51通りの予測で事前放流を判断
豪雨災害を防ぐため、国は治水と利水に関わらず全ての既存ダムで事前放流の活用を促す。放流の判断が遅れると水害を引き起こす恐れがある一方、放流しすぎると水不足になる。AI(人工知能)を活用することで、より精度の高い雨量予測が可能になった。
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被災地の「口コミ」で災害対応支援
SNS(交流サイト)で市民から集めた膨大な情報を人工知能(AI)で活用する。注目を集める防災テックの中でも、最も実証や導入が進んでいる技術領域といえる。代表的な技術が、ウェザーニューズなどが開発する「防災チャットボット『SOCDA』」だ。
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従来の予測式の弱点をAIで補う
地震動予測でも、AI(人工知能)を使えば予測の精度を高めることができる。ただしAIだけでは、まれにしか生じない強い地震動を過小評価する傾向があった。従来の地震動予測式とAIを組み合わせ、互いの弱点を補うことで精度向上を図った。