AI(人工知能)技術を活用することで、浸水被害の予測は従来よりも格段に速く高精度になる。被災状況の把握に使えば、罹災(りさい)証明の発行や保険金支払いの迅速化にもつながる。防災面の直接的な効果だけでなく、作業するスタッフの負担軽減も図れる。
AI(人工知能)とドローンを使って集中豪雨や津波などによる浸水被害を短時間で予測する──。そうした予測技術の導入を、東日本大震災の津波で被災した福島県広野町が進めている。住宅の浸水対策や避難経路の確保などに活用する狙いだ。
広野町の取り組みを技術面で支えるのが、東京大学発のベンチャー企業でAI技術に強みを持つアリスマー(東京都港区)。同社とドローン測量を手掛ける大和田測量設計(広野町)は2020年6月、広野町と「AIスマートシティプロジェクト推進協定」を締結した。
アリスマーが開発した「浸水予測AIシステム」では、ドローンで取得した測量データから3次元(3D)の地形図を作成。地形図を基に、AIが雨量や河川の決壊場所など膨大な組み合わせから、地域の水の流れを計算して浸水被害を予測する(図1)。
AI活用の利点は、速さと精度の高さにある。アリスマーの大田佳宏社長は、「これまで膨大な手間がかかっていた浸水予測をわずか数時間で算出でき、予測する浸水深も1cm単位と詳細だ」と話す。