豪雨災害を防ぐため、国は治水と利水に関わらず全ての既存ダムで事前放流の活用を促す。放流の判断が遅れると水害を引き起こす恐れがある一方、放流しすぎると水不足になる。AI(人工知能)を活用することで、より精度の高い雨量予測が可能になった。
2018年7月の西日本豪雨や19年の東日本台風による豪雨など、近年は河川の氾濫や浸水被害を引き起こす豪雨が相次いでいる。豪雨時の水害を抑える手立てとして、国は19年12月に「既存ダムの洪水調節機能の強化に向けた基本方針」を発表。その中で事前放流の活用を示した。
国の示した基本方針で対象となるのは、利水と治水に関わらず全ての既存ダムだ。事前放流では、大雨の発生が予想される際にあらかじめダムの水を放流して水位を下げる。予想に反して雨量が少ないと、水不足に陥る恐れがある。より高い精度の雨量予測が不可欠になっている。
そうした背景を踏まえ、日本気象協会は20年6月に「ダムの事前放流判断支援サービス」を開始した。AI(人工知能)による独自開発の「JWAアンサンブル予測」のデータを活用し、最大15日先までの降雨を予測してダム管理者を支援する(図1)。
サービスでは、過去の洪水事例やダムの能力に基づき、ダム管理者が事前放流の目標水位などを設定。大雨が予測された場合、そうした情報や予測雨量を踏まえて、事前放流のタイミングや放流量を判断する。
ダム管理者は、予想雨量や放流判断などの情報をブラウザー上で確認できる。オプションサービスとして、放流判断が出た場合にメールで通知を受け取ることも可能だ。