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SNS(交流サイト)で市民から集めた膨大な情報を人工知能(AI)で活用する。注目を集める防災テックの中でも、最も実証や導入が進んでいる技術領域といえる。代表的な技術が、ウェザーニューズなどが開発する「防災チャットボット『SOCDA』」だ。

 東日本大震災から10年を迎えた2日後の2021年2月13日、福島県沖を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生。震度6弱を観測した福島県南相馬市では、導入していた「防災チャットボット『SOCDA』」に市民から約130件の声が集まった。

 ウェザーニューズと防災科学技術研究所、情報通信研究機構が開発するSOCDAは、SNSアプリのLINEを通じて、自治体やインフラ関連企業などの防災担当者と被災者が相互に連絡できるシステムだ。南相馬市の他、三重県や徳島県など複数の自治体が既に導入。実証実験を繰り返し、機能の拡充を図っている。

 発災時には、AIがLINEを通じて被災者や自治体職員などと「対話」する。その対話の内容から、避難場所や不足物資、被災状況といった災害関連情報を自動で抽出・集約し、被災者や自治体に提供する。情報が足りなければ、被災者にプッシュ通知で直接状況を聞く(図1)。

図1■ 人工知能が被災者の報告を分析して被害状況を整理する
図1■ 人工知能が被災者の報告を分析して被害状況を整理する
左はLINEのアプリを通じて、住民がスマートフォンで被害状況を登録する様子。右は集めた情報を分析したシステム画面。人工知能が住民の報告コメントを分析し、被害の内容などを地域ごとに分類して集計する(資料:ウェザーニューズ)
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 先の南相馬市の例では、夜の発災後すぐに「断水している」「水が茶色い」など水道のトラブル情報が多く寄せられた。さらに夜が明けると、道路のひび割れなど屋外のトラブルも明らかになった。

 発信元で分類すれば、信頼のおける情報に絞って被災状況を分析できる。例えば自治体職員が「道路に亀裂がある」とコメントしていたら、道路被害の確度は高いと判断できる。