大気中の二酸化炭素(CO2)とコンクリート廃棄物と水を使ってコンクリートを造る──。究極の環境配慮型コンクリートの研究開発が始まった。製造時に大量のCO2を出すセメントを使わないため、造れば造るほどCO2が吸収される。資源枯渇問題の解決にも寄与する。
1円玉と変わらない大きさの新素材が、カーボンニュートラルの実現に向けた次世代のコンクリートとして話題を集めている(写真1)。東京大学や北海道大学、清水建設、太平洋セメントなどが共同で開発している「カルシウムカーボネートコンクリート(CCC)」だ。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2020年度に、ムーンショット型研究開発事業の1つに採択した「C4S研究開発プロジェクト」の一環で生まれた。
一見すると、ミニチュアのコンクリート供試体だが、配合する材料、製造方法ともに通常のコンクリートとは一線を画す。
「コンクリート廃棄物と、大気中の二酸化炭素(CO2)、水を原料とする。製造時に大量のCO2を排出するポルトランドセメントを用いず、水和反応もしない。全く新しいコンクリートだ」。開発チームでプロジェクトマネジャーを務める東京大学大学院工学系研究科建築学専攻の野口貴文教授はこう解説する。
硬化のメカニズムはシンプルだ。砕いた廃コンクリートで製造した骨材同士を、カルシウム源である炭酸カルシウムを使って結合させる。では原料である廃コンクリートと水とCO2から、どのようにして炭酸カルシウムを生み出すのか。