国土交通省や建設会社などが総力を挙げてデジタルトランスフォーメーション(DX)を推し進めている。新型コロナウイルス対策で遠隔臨場を急速に拡大。AI(人工知能)を活用した水道管の劣化予測やドローンの目視外飛行など新たな挑戦も相次ぐ。注目すべき最新の建設DXの動きを追った。

加速する建設DX
建設ICT2021
目次
-
大林組が始めた遠隔臨場の進化形
映像や音声を使って遠方から工事の検査や進捗確認を実施する「遠隔臨場」。大林組は、受発注者の双方が試験場に出向かずに品質試験をする遠隔臨場に乗り出した。発注者だけでなく、受注者にとっても働き方改革につながる取り組みが始まっている。
-
映像酔いや撮り逃し対策も万全
遠隔臨場が広がるなか、一歩進んだ撮影機器やアプリを使いこなす工事現場が増えてきた。手ぶれ補正機能や360度画像が個々の現場の課題を解決する。リモート技術は実証実験から、実際に施工現場で活用する段階へ移行しつつある。
-
画像解析で検査時間を4分の1に
多くの人手と時間がかかり、悩みの種だったコンクリートの配筋検査。最近、画像解析技術を用いて自動で鉄筋の間隔や径を算出するシステムが続々と登場している。国土交通省では、配筋検査システムと遠隔臨場を組み合わせた業務改革を全国で試行する考えだ。
-
ビッグデータで脱「古い順に更新」
古い水道管ほど破損しやすいとは限らない──、兵庫県朝来市の漏水実績から明らかになった事実だ。米スタートアップのFRACTAは管径や材質、周辺の土壌などのデータからAIで破損確率を算出。これを基に更新の優先順位を定めれば、維持管理コストの削減につながる。
-
上空300mの無線中継で目視外飛行
奈良県十津川村で2021年3月、国土交通省が防災目的で全国初のドローンの目視外飛行を実施した。電波が地形で遮られるので、別のドローンを上空300mの位置に飛ばして無線を中継した。目視外飛行が可能になれば、山岳地帯などでドローンの活用範囲が大幅に広がる。
-
2年後見据え中小建設会社を支援
国土交通省発注の全ての設計・工事でBIM/CIMモデルを原則活用する目標時期まであと2年を切った。国交省は3次元モデル成果物の作成要領を策定し、2021年度から大規模案件の設計業務に適用している。1年遅れて原則化が始まる工事でも必須のCIM対応に向け、中小の建設会社を支援する動きも出てきた。
-
国は矢継ぎ早の拠点開設で普及図る
国土交通省がインフラDXの拠点を相次いで開設し、普及に向けて攻勢をかけている。職員だけでなく民間企業や自治体にも開放し、先端技術を体験してもらう場とする。高速通信環境を整備し、無人化施工などの技術開発も進める考えだ。