映像や音声を使って遠方から工事の検査や進捗確認を実施する「遠隔臨場」。大林組は、受発注者の双方が試験場に出向かずに品質試験をする遠隔臨場に乗り出した。発注者だけでなく、受注者にとっても働き方改革につながる取り組みが始まっている。
静岡県小山町で進む新東名高速道路の跨道橋工事。プレストレスト・コンクリート(PC)の上部構造を施工する大林組は2021年2月、コンクリートの品質試験で新しい遠隔臨場を始めた。自社と発注者である中日本高速道路会社の双方の担当者が、それぞれ試験場から離れた場所で状況を確認する遠隔臨場だ。その名は「遠隔代理立会」。圧縮強度試験や膨張率試験に導入した(写真1)。
試験の場所は内容に応じて異なる。甲府市や神奈川県茅ケ崎市など、大林組の現場事務所や静岡県沼津市にある中日本高速の事務所からは県をまたぐ試験場もある(図1)。
通常は施工に関して十分な知識を持つ技術士やコンクリート主任技士など、施工現場の有資格者が発注者と共に試験場に出向く必要がある。
この工事で大林組は、施工現場に携わらない協力会社の有資格者を試験場に派遣。帳票データを共有するタブレットやウエアラブルカメラなど遠隔臨場に使う機器類を貸し出し、使用方法を説明した。試験の状況をビデオ会議で共有し、中日本高速の担当者と大林組の有資格者の双方がそれぞれ離れた場所で確認する仕組みを作った(図2)。
ピーク時には週に1、2回程度あるコンクリート試験で、7~8割に遠隔代理立会を導入した。「移動時間を節約でき、人数が限られる有資格者の生産性が高まった」。大林組の新東名大御神跨道橋工事事務所の濱田啓司所長はそう語る。